休日だったがどこへも行かず、自分の好きなことに没頭していた。
ヴェルヴェットアンダーグラウンドの『Ⅲ』を聴きながら一日中部屋に籠って文章を書いたり本を読んだりしていた。
文章を書く時は洋楽が適している。
何故なら邦楽だと、歌詞に聴き入ってしまうからだ。
ヴェルヴェットアンダーグラウンドもメロディアスな旋律に耳が行ってしまうが邪魔にはならない。
気分転換に普段なかなか開けないカーテンを開け、陽射しが入ってくるようにしてみた。
私は基本的には薄暗い部屋の方が好きなのだが、そうは言っていられないくらい勿体ないいい天気だった。
少々寒かったが、エアコンをつけるまでもない、そんな一日だった。
ところであまり時間が無いので、新作を書くにあたって読まなければならない本を厳選した。
何の本かは伏せるが、数冊の本を読み込むことで何とかなるかも知れないという根拠のない光が見えてきた。
というのも、何度も言っているが大事なのは独自性であって誰かの真似になってはならないからだ。
今読んでいる『村上龍文学的エッセイ集』はとても面白く勉強になるのだが、新作は三人称で書こうかなと漠然と考えている。
その方が好きなことが書けるような気がする。
そのために小説を何冊か読む。
ところで、私は子供の頃の親からの虐待が原因で不眠症に悩んでいて、物心付いた頃から酒を飲んで寝るような生活を送っていた。
実家を出てから酒量は増え、泥酔しないと眠れないようになった。
初めて精神科を訪れたのは二十六歳の頃だ。
仕事が夜勤と日勤の交代制になったので、これはお手上げだと思い睡眠薬を貰いに行ったのである。
慣れていない頃は少量で眠れたのだが、今ではかなりの量を飲んでいる。
それにプラスして酒が無いとダメだ。
頭がボーっとするくらい酒を飲まなければ、睡眠薬が効果を発揮してくれない。
その代わり、爆睡できる。
実は担当の医師には酒のことは伏せてある。
何故ならきっと入院させられるからだ。
煙草が吸えて、パソコン持ち込みOKならば入院してみるのもアリなのだが、本を読んだり知人の体験談を聞く限り、行くところではないようだ。
なんだか深刻なようだが、私にとってはこれも一つのネタだ。
日本中、いや、世界中探せば、私のような極度な不眠症は五万といるだろう。
確か映画『タクシードライバー』のトラヴィスも不眠症だったような気がする。
私のように毎日一定時間爆睡することが必要な人と、いっそのこと寝ないという人がいると思うがどちらが身体に悪いのだろう。
近しい親戚のおばさんは、通常通りの睡眠薬を服薬して眠り、次の朝になったら帰らぬ人になっていた。
そう云うケースもあるから、恐ろしいと云えば恐ろしい。
ただ、眠れない夜、布団の中で色んな事が閃くから面白い。
新作のタイトルも、布団の中で昂った神経を何とか抑えようとしている時に閃いたのである。
大抵、眠りに就く前に思い付いたことと云うのは忘れてしまうのだが、タイトルは忘れなかった。
それと肝心なことがあって、私は独身時代、悪夢ばかり見るヤツだった。
それも実の父親に侵されそうになるという恐ろしい夢だ。
結婚してから服薬しなければならない薬の量はかなり増えたのだが、そのお陰なのかどうなのか悪夢をあまり見なくなった。
そう考えると、何が正しくて何が間違っているのかわからない。
ただ一つ言えることは、酒と薬を混ぜてはならないということだ。
中にはビール程度なら大丈夫だという医師もいれば、一滴も飲んではならないと言われたこともある。
今の担当医に、正直に話したらどうなるのだろう。
禁酒外来みたいなところへ通うことになるに違いない。
大体、私はこんなに天気のいい日に何故こんな不健康な話をしているのだろうか。
それもまた、ヴェルヴェットアンダーグラウンドを聴いているからと云うことにしてしまおう。