nakanakadekinai's diary

単なる日記でもなければ、単なるエッセイでもない

土砂降りの中ずぶ濡れで

久々の工場での肉体労働、めちゃくちゃ疲れた。

雨の中帰ってきて、白身魚のフライをつまみにビールを飲んで、トリスハイボールと共にこれを書いている。

本当は夜はゆっくりしようと思ったのだが、日曜日は買い出し、ランチ、勉強会がある。

バタバタなのだ。

 

現場は想像を絶する寒さだった。

真冬用のジャンパーに、ヒートテックにタイツを履いて行ったのだが、寒くて仕方がなかった。

なんせ冷凍食品の仕分け作業やら梱包作業をするので、ゴム手袋の方が良かったらしい。

そんなことは現場で作業した者にしかわからない。

私の軍手は氷で濡れ、指先が痛かった。

かなり動いたが、足元は冷たく、レッグウォーマーが必要だった。

ヒートテックではなくセーターが欲しかった。

それでも私なりに頑張ったつもりだ。

ただ、一日限りの所詮は派遣の仕事なので、百パーセントのチカラは出さなかった。

その代わり始終ボロカスに怒られまくって一日が終わった。

名前すら読んでもらえなかった。

 

「ちょっと、今何やってんの?とっととして!」

「ハイ、すみませんでした。2000番の商品の仕分けをしていました」

「何やってんの?それ、もう終わったから他のやってよ!!」

「ハイ、すみませんでした」

「さっきも言ったよね?説明したでしょ、さっさとしてよ!」

「ハイ、すみませんでした。わかりました。すぐやります」

「はア~ぁ」

 

この遣り取りを何度繰り返したかわからない。

遠くからは私を嘲笑う声が聞こえる。

しかし、この程度で泣き出すような軟ではない。

腹の中ではこう考えていた。

きっとコイツ等は、私がスッポットで(その日だけ)入っているということを知っているのだろう。

だからゴミ以下の扱いをするのだ。

私のことを愛してくれる者がいるならば、二度と行くなと謂うだろう。

こんなクソみたいな先輩どもにコキ使われるのはまっぴら御免だ。

作業自体は、三日もすれば覚えて慣れてしまうような仕事ばかりだった。

初めてのことなのでオロオロしてしまったが、大した仕事ではない。

それなのに新人に優しく接する器と仕事に対する余裕がないとなると、私から言わせれば能力が低いのだ。

よくよく見れば、どいつもこいつも派遣社員じゃないか。

社員に偉そうにされるならまだしも、同じ派遣会社の者同士支え合おうという気持ちはないのかい?

ないんだろうな~。

休憩所の案内もしてくれないので、私は敢えて社員の人に道順を訊いた。

そしたら休憩所まで案内してくれた。

休憩所は電波が無く、喫煙所へ行ったら繋がったが、長居するわけにも行かず、居場所が無かった。

況してや実質三十分の休憩、煙草を吸ってお手洗いへ行けばもう現場に戻らなければならなかった。

綺麗な工場で、見学の時点では眩しく映ったのだが実際に働いてみると違うものだ。

偉そうにしている派遣社員のことが信じられなかった。

お前は私より半年ばかり早いだけの派遣社員だろうが!

この程度の仕事内容で天狗になれる神経が私にはわからん。

挨拶が大事な会社だと見学会の時散々言われたが、立派に私に挨拶してくる者など一人もいなかった。

やはり教育がなっていないのは派遣社員かも知れない。

 

就業時間が過ぎて、私は一人検品作業を行っていた。

振り返った時一人も残っていなかった。

 

「頑張ってね、お先に失礼します!」

 

そう言えるヤツが一人もいないのかと唖然とした。

上の者にだけ挨拶をし、下の者には挨拶はしなくていいという教育なのだろうか。

随分程度が低い。

それは人として、同じ労働者としての礼儀がなっていない証拠だ。

煙草も吸わず真っ先に会社を出たが、既に十五分過ぎていた。

外は土砂降りで、傘を持っていなかった私はジャンパーのフードを被って近くにあるスーパーへ寄った。

私だから泣きはしないけれども、普通の女の子なら泣いているかも知れない。

外気温は恐らく二十度以上あったはずだが、身体が冷え切ってジャンパーを脱げず、そのまま帰ってきた。

もう、行かないかも知れない。

そう思った。

 

 

破壊から再生へ

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  • 作者:橋岡 蓮
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