かなりの勢いで、旦那は私のことを誤解していることに気付いた。
私が旦那のことを煙たがっていると思っているようだ。
と云うのも、土曜日旦那の健康診断だったのだ。
「どこか悪いところ無かった?」
「健康体だって言われたよ!」
「血液検査の数値は大丈夫なの?」
「だから、健康体だって言われたって言ってんじゃねぇ~かよ」
「肝臓の数値とか、コレステロール値とかは?」
「そうやって無理矢理俺を病院へ送り込みたいんだな」
「違うよ、心配して言っているだけじゃない」
「蓮ちゃんって、そんなに俺に病名付けたがるんだね」
いやいや、ちょっと待ってよ!!
私と結婚するまで酒が飲めなかった男が、我が家『スナック蓮』が居心地よすぎて毎晩酒を飲むようになったのだ。
だから、一気に肝臓の数値が上がっていないか心配だっただけなのに。
確かにちょっと前までは、コイツさっさと死ねばいいのにと思っていた。
しかし、私自身反省する部分が多々あり、自分の弱さに目を向けることで全てを許す気になった。
そして、早死にされたらどうしようかとうろたえている自分に気付いて純粋に心配していただけの話だ。
そりゃあ、入院されたら毎晩遊びに出掛けるかも知れない。
一人でじっと家にいられるタイプではないので、こんなご時世じゃなければ、徘徊していることだろう。
それとこれとは話が別だ。
早死にされたら、確実に私は再婚するけどね。
未亡人として生きて行くなんて私にとってはあり得ない。
旦那への裏切り行為かも知れないが、一緒に暮らせる人を探すだろう。
かといって私が早死にしたら、旦那には別の人のところへは行って欲しくない。
正真正銘の自己中心的な考え方だが、本心である。
ほとんどの人が言わないだけで、こういう気持ちを抱えているのではないだろうか。
私は孤独になる覚悟の上、十五歳年上の人と結婚したのだが、やっぱり孤独は嫌だ。
私の半生、ずっと寂しかったので、晩年は寂しい想いをしたくない。
願わくば、いつまでも女でいたい。
これも本音。
悪いが、私は本心しか書いていない。
混乱していて取っ散らかっている時もあるが、それも本心。
ついでだから、更に本心を書く。
私って女は、こういうところが男っぽくできている。
隙あらば遊ぶ、というところだ。
何故そういうことをするかと云うと、弱いからだ。
弱さとは脆さ、儚さである。
今は旦那に束縛されているので何もできないが、たづなが切れたらどこまでも飛んでいくだろう。
不安で不安で仕方なく、寂しさを埋めようと、転々とすることだろう。
ご近所では、夫に先立たれた女性達がウヨウヨいる。
旦那が建てたであろう一軒家に、シレっと暮らしている。
私には、そんな度胸はない。
かといって、旦那がいなくなったら別の男の人を家に連れ込む度胸はある。
要は、一人で生きて行けないって話だ。
もうね、ここまで来たら開き直ろうと思っている。
独立精神など捨ててしまっても構わない。
元々私は独立精神旺盛で、男がいたらいたで、この人無しでも生きて行ける女でありたい!などと思ってしまうタイプ。
身の程知らずなのだ。
いざ一人になったら寂しくて寂しくて、何もできないと云うのがオチ。
自立した強くたくましい女だと誤解している人がいたら、大きな間違えだ。
『破壊から再生へ』を読んでくれた読者は、私のことを強いと思うかも知れないが、実は弱いのである。
それは周りがあきれ返るほどだ。
だからこそ、うざったい旦那がたづなを引いてくれていることには意味があるわけで。
私のことを誤解していると思ったが、実はわかっているからこそ束縛しているのかも知れない。
隙あらば遊んでしまうタイプの女だと云うことを。
家でじっと待つことなんて、以ての外。
旦那が飲み会だったりすると、何とかして遊ぼうとする。
苦労しているのは私ではなく旦那の方だったりして。