遂にやった!!
意地悪先輩のミスを発見するに至った!!
売り場には賞味期限切れのパンが一つと、値札を貼っていないパンが二つ。
シフトを見たら、例の意地悪先輩の番だ。
彼女は主任であり、唯一正社員なのだ。
私が先日賞味期限切れの食パンを見逃したら徹底的に叱られた。
「橋岡さん、このままじゃパン屋にいられなくなるわよ!!」
ところが私が出勤してみたら、自分だって私以上のミスをやらかしているではないか。
でも気の弱い私は、それをこそっと他の優しい先輩にのみ報告した。
誰にでもあることだからだ。
その先輩は誰にも言わず、証拠を隠滅した。
元アパレルの先輩は七十歳なのだが、あか抜けている。
そして親しみ易いので、私は密かに信頼を寄せている。
こんな七十歳なら、七十代も悪くないと思わせてくれる。
アパレルをやっていたくらいだから、昔はもっと綺麗だったのだろうなぁ。
そうこうしているうちに、主任が会議から戻ってきた。
直接主任に言ってくれ!
そう願ったが、元アパレルは言わなかった。
まぁ、開店前にミスを発見できて良かったな、と私は思った。
私ってお人好し過ぎるか?
これだからなめられるのだろうか。
かといって、店長にチクるなどのことは私にはできない。
何故だろうか。
店長も主任の味方であるとわかっているからだ。
この職場に私の味方などいるはずがない。
そう考えた時、ふと元アパレルのことを想った。
元アパレルは、この仕事は長いらしい。
当然主任の性格まで見抜いていることだろう。
言いやすい、言いにくいの部類で言えば、主任は言いにくい人間なのだろう。
その点、私は言いやすいのだろう。
だんだん主任のことが、パワハラ上司に見えてくる。
というより、程度が知れる。
きっと主任は偉そうにしているけれど、大した上司ではないのだろう。
ということは、あと半年もすれば私の方から阿呆らしくなって嫌気が刺すかも知れない。
それと同時に私がやっている仕事の受注などが増えて、バイトの必要が無くなるかも知れない。
今、音楽も聴かずテレビがうるさいリビングで、芋焼酎ロックを飲みながらこれを書いている。
さっき温いビールを飲んだばかりだ。
理由は、言うまでもない。
冷蔵庫に入れ忘れたのだ。
これね、よくやる失態。
毎晩のビールを楽しみにしているにもかかわらず、どうして冷蔵庫チェックを怠るのだろう。
こういうことがあると、仕事ができないことにも繋がっているような気がしてならない。
賞味期限切れのパンを見落とすことと、冷蔵庫の中にビールが入っていないことを見落とすこと。
要は、おっちょこちょいと呼ぶのだろうか。
注意力散漫ともいう。
ところが、お惣菜コーナーでミスしたことは一度もない。
たぶん一人作業だからだ。
その点パン屋は、誰かも見てくれているだろうという気持ちが働くのかも知れない。
ただこれだけは言っておきたい。
私には生涯かけてやりたいことがある。
それは「書く」ことである。
ぶっちゃけ書くこと以外はどうでもいいのだ。
といいながら、音楽や文学を自己流で研究している。
自慢できるほどではないが友達の影響もあって、結構詳しくなった。
何の役にも立ちそうにないが、友達とこんな話をした。
「作家や画家は死んだ後、評価される場合もあるよね」
「そうだね。だけど『蓮’sBar』は私が生きていないと聴けないよね!」
さらにこう思った。
毎日のこの文章だって、私が死んだら更新されなくなるわけだ。
本は死んでも読めるが、これは読めなくなる。
万が一、自分に死期が近づいているとわかったら、これらをまとめて本にしてしまうかも知れない。
過去作もまとめて本にしてしまうのもアリ。
私は死んでから名声を得るよりも、生きている間にワイワイやりたい。
死んだ後、消えていくよりそりゃあ知名度が上がった方がいいけれども。
いずれにしても、パン屋を卒業してからの私が楽しみだ。
三年は掛からないだろうな。