nakanakadekinai's diary

単なる日記でもなければ、単なるエッセイでもない

失われた生命力

美容室へ行って、伸びた部分を染めただけで少し強くなれた気がした。

毎月通えればいいのだが、決して安くはない店なので、そういうわけにもいかない。

しかし、染める前と後ではこうも気分が違うものなのかと思う。

最近、人前に出ることが増えた私。

それを想うと考えさせられる。

美容室代は必要経費だよな、と。

そんなことも考えて、幾つか入っていた保険の一つを解約した。

毎月一万円の支払いだったのだが、浮いた分を美容室代に充てるのもいいよなと思った。

解約したので、当然戻ってくるお金もあるわけだ。

それは大事に使うつもりだ。

 

 

美容室へ行くと、オーナーが私の仕事の進捗具合を訊いてくる。

 

「スーパーを辞められてから、作品創りは進んでいますか?」

 

待ってましたと謂わんばかりの質問。

 

「今は別の方の作品の編集や校正をしていて、私の作品は来月からですかね」

「お忙しそうですね」

 

私が何でもベラベラ喋るので、私のことは大体知っているオーナーさん。

今回も要点を絞って簡単に説明してきた。

起業したことが主だが、旦那の話はしなかった。

海外出版の話をすることを忘れていたが、その話は来月話せばいい。

脳裏をかすめたのは、私は一体いつまでこの店に通うことになるのかということ。

新しい町へ引っ越すことになるのだろうか、それとももうしばらくこのままお世話になるのだろうか。

 

 

店を出て、振込するためにかつて働いていたスーパーのATMに立ち寄った。

不思議なことに、そのスーパーから生命力が感じられなかった。

何となく、寂れた感じがした。

その瞬間にこう思った。

もしかしたら、もうあまりこのスーパーへ通うこともなくなるだろうと。

そう考えると、目に映る近所の風景は寂れているように感じた。

この家の玄関を開ける時さえ、何となくよそ様の家にお邪魔するような気まずさが走った。

リビングに入ると、そこには私の仕事用デスクがあるから、違和感なくこうして文章を書いている。

しかし、換気扇の下で煙草を吸いながら住む家などどこでもいいような気持ちにもなった。

この家から愛犬がいなくなって一年半。

当初はまるで自分の家じゃないような寂しさがあったが、愛犬の魂はとっくにここにはないような気持ちさえ芽生えてしまった。

 

 

つまりこういうことだ。

ここにいても何も生まれないような、非生産的な空気を感じたのだ。

別に居心地が悪いとか、何もかも嫌になったとか、落胆しているとか、そういうことでもない。

わかり易く言えば、着々と終わりに向かっているのだと感じた。

大丈夫。

私がそう感じたということは、世の中はもっと早いスピードで動き出しているということだ。

むしろ、私は鈍感なくらいかも知れない。

ここにいなきゃ生きて行けない女ではない。

もはや金の問題でもないのかも知れない。

気持ち一つ。

心に何を誓ったのか、ただそれだけだろう。

 

「私、人妻ですけど、誰かもらってくれませんか?」

 

って、メルカリに出品してみようかな。

オークションにでもかけてみようかな。

値段設定幾らにすれば落札されるのか。

ここは簡単に落札されないように、一旦高めに設定しておいた方が良いのだろうか。

 

「オークションになんかかけるな、バカヤロ~!!!」

 

みたいなことが言えちゃう人がいればいいのだが。

そんなことを考えながら、トリスをストレートで飲んでいたらむせた。

こういう時はカッコいいロックを流しながら、ウイスキー飲んで、寝てしまえば良いのかも知れない。

でもロックがあまりにもカッコいいから、もう少し聴いていたくてパソコンに向かっている。

あぁ、私、どこへ向かうのか。

 

 

リスクさえ背負えば、想い通りになる気しかしない。

私は誰から愛されていて、誰になめられているのか分別までつくようになるんだ。

騙されやすい私も魅力の一つだったけれど、これからは自分を守れるようにならなくてはならない。

お馬鹿な私にもそれくらいできる。