実は、親から譲り受けた広大な土地を私は持っている。
およそ三百坪ある。
場所は北海道空知郡美流渡。
とてつもない田舎で、買い手もいないそうだ。
だから私は親から託されたわけだ。
勿体ないから、誰か使ってくれる人を探して欲しいと。
美流渡というのは、父方の祖父母が住んでいた町。
父親が育った場所だ。
スーパー無し、コンビニ無し、電車無しだ。
バスは一日三本。
煙草屋も無ければ、酒屋も無い。
学校も無ければ病院も無い。
そんな場所に私は一つの施設を作ろうと思っている。
誘惑が無い、逃げ道が無い、そこにいるしかない。
そこに行きつくのは、人生に挫折してしまった人々。
例えば、刑務所上がりの人や、薬物依存に陥ってしまった人達など。
シャバの空気を吸いつつも、社会復帰するにはまだ早い。
本当の意味で生まれ変われるような施設を目指す。
まずは労働をしてもらう。
広大な土地で、畑を耕してもらう。
そして、長く深い冬の雪掻きが待っている。
理想としては、そこにグランドピアノを置くのである。
大自然の中、近隣を気にすることなく、ダイナミックに演奏ができる。
きっと、我こそはという人がいることだろう。
その施設では、労働だけではない。
徹底的に勉強してもらう。
その辺の大卒より、もっと社会的価値のある人間になってもらいたい。
私だって、中卒のようなものだ。
高校に入学し、卒業したものの、ほとんど勉強していない。
ましてや、私は誰にも言えない道に走ってしまった。
その辺については『ロックンローラー』で語る。
だけど、そういう施設があったら、私も入りたかったくらいだ。
しかし、私は自力で労働の道へ突き進んだ。
この広大な土地を私と志大学校で譲り受け、社会貢献ビジネスを始める。
何度も訪れたことのある思い出深い町でビジネスを始めることができることに、親へ感謝。
先祖へ感謝。
どこかの知らない人に売りに出すのではなく、私の財産として残してくれて本当にありがたい。
この土地をどう活かすべきかについては、自分一人では考えられなかったので、志大学校には感謝している。
でもなんだな。
こういうことを言えば言うほど孤独になっていくのはわかる。
私もそこまで馬鹿ではない。
しかし、得るものが大きければ大きい程、失うものもあるということ。
それも痛い程わかっている。
思うことは、自分の運命を受け入れた時、自分の運命を愛せたならば不合理や不条理も受け入れられるようになる。
その時、きっと心だけは自由になれる。
私は友達にも恵まれて、皆の蓮さんであることに変わりはない。
だけど私の人生に付きまとうのは不合理や不条理かも知れない。
もしかして私は真の友達というものは、よほどのことがない限り、作るのは難しいのかも知れない。
何故なら、私は強烈な個性を持ち合せていることと、協調性に欠けるからだ。
独創性と独立心が旺盛だから、きっと事業も上手く行くだろうし、作品創りも順調に進むだろう。
だけど、きっと私には孤独からは逃れられない。
かといって、孤独を孤独と受け止めることなく、私は幸せに生きて行くだろう。
それでいいんだと思った。
人生は決断の連続。
決断力のないヤツは、運を逃す。
幸い、私には決断力だけはある。
とはいうものの、心が赴くままに向かっていくだけ。
恐らくこれからどんどん渦に飲まれて行く。
嫉妬やら、中傷やら、無視やら色々あるだろう。
私って案外上手くできていて、それらに気付かないことが多々。
全ては信頼から入り、傷付けられても尚、信頼してしまうという性。
ところが、それも一つの生き方として、私は堂々としていられる。
この人だと思った人には、一直線で向かう。
懐疑の心など、不必要だと思っている。
ただ、相手をよく観察することは重要かも知れない。
偉そうなことは言えないけれども。