nakanakadekinai's diary

単なる日記でもなければ、単なるエッセイでもない

泣けてくる話

なんとまぁ、冷蔵庫が壊れてしまった。

引越しと同時に買った中古品の冷蔵庫だ。

実を言うと、たった二ヶ月間で二台目である。

なんせ中身が冷えないので、不味いビールを飲む羽目になる。

私にとってそれは許されないことだ。

中古品はこんなにもダメだったっけ?

当たりが悪いだけなのかな?

とにかく、何はともあれ温いビールはダメだ。

というわけで、暑い夏が来る前に、結局新品冷蔵庫を買うことになった。

結論から話すと、アマゾンで買った。

もっと高いと思っていたのだが、中古品と一万円しか差がなかった。

リサイクルショップは全額返金してくれるとのことだった。

業者さんが引き取りに来てくれる前に、これを書いている。

新品冷蔵庫も届くので、出先から早めに帰ってくる必要があった。

しかし私は、帰宅しても冷えたビールが飲めないということを言い訳に、いつもの店に寄った。

 

 

大体午後三時くらいは店側としては一番暇な時間帯でもある。

案の定、空いていた。

煙草が吸いたかったので、外のテーブルに座った。

店員さんは、私を見るなり少し嫌そうな顔をした。

こんな些細なことに傷つくのが私だ。

こっちはお客なんだから気にすることないのに、以前泥酔してしまったから、それを覚えているのだろう。

誰かと一緒ならあまり気にしないのだが、なんだか居づらい気分になった。

でも座ったからには頼まなければならない。

瓶ビールともつ煮をオーダーして、大人しくしていた。

恐らく、前回泥酔したせいで、出禁スレスレだったんだろうな。

もしかしたら、店側から嫌われているのかも知れない。

だけど、私はこの店しか太鼓判を押せるところはないんだよな。

なんて考えながら、煙草を吸うのも気まずい。

ビールをグラスに注ぎすぎて泡をこぼしては、怒られるんじゃないかと気まずい。

もう、胃の中に流し込むように瓶ビールを空にして、LINEの返信を済ませたらさっさと立ち上がってこう言った。

 

「すみません、ご馳走様でした」

「ん、ちょうど千円」

 

始終ソワソワしていたが、この瓶ビールの冷え具合、もつ煮の味、やっぱ美味い。

そんなことを想いながら、財布の中から千円札を取り出してお兄さんに渡した。

すると、驚愕した!!

 

「どうもね、まいど!」

 

まいど?

それ、どういう意味ですか?

やはり私のことは覚えていたようだが、大抵「まいど!」とは好意的な意味で使われる言葉と認識している。

え?

私のこと嫌いじゃなかったの?

なんだか、嬉しい気持ち半分、恥ずかしい気持ち半分。

タニタしながらも半泣きで店を出て、駅まで向かう間、ずっと「まいど!」の意味について考えていた。

覚えてもらえたことは嬉しいことなのだが、反面それだけ通っていることにも繋がるわけで。

月に一、二回しか行っていないはず。

女が一人で昼間から立ち寄るのが珍しいのか、それとも以前泥酔してしまったからか。

恥ずかしいという気持ちは久々に味わったような気がして、とてもセンチメンタルになった。

ただ、どうやら出禁は見逃してくれたということだろう。

大事な店では大人しく飲むに徹しよう、などと肝に銘じた。

 

 

帰りの電車の中で、とある方からメールを戴いた。

本が届きました、との内容だった。

とても丁寧に書かれたもので、思わず感極まって涙が零れそうになった。

今日の私はなんか変だぞ?

いちいち感傷的になっている。

本が無事に届いたことや、お気に入りの店で出禁にならなかったことから、やはり人間の温もりを感じた。

マスクをしていたから周囲からはわからなかっただろうが、鼻水をすすっていた。

勝手な思い込みかも知れないが、私の想いが本を買ってくださった方や、店員のお兄さんにも伝わったようで泣けてきたのである。

実に心が温まり、本当に救われる想いだった。

そんなこんなで、壊れた冷蔵庫を取りに来たお兄さんにも愛想よく接しようと思いながら、待っているのであった。