nakanakadekinai's diary

単なる日記でもなければ、単なるエッセイでもない

軌跡を見せる

友人の女性と久々に話をさせて頂いた。

実は過去に『氷の楽園』という本を自費出版させて頂いた。

編集校正ゼロ、デザインもしていない。

それなのに割といい値で販売していた。

Amazonでは電子書籍販売をし、直販では紙の本もあった。

ところが、某出版社から『破壊から再生へ』を出版するにあたって、一度販売を休止したのだ。

だから今はどこへ行っても売っていない本になっている。

ところが、昨年末、私は彼女に出会った。

たった四ヶ月ほどで一気書きした作品で、もう五、六年前の作品なので、他人様に見られることがとても恥ずかしかった。

ただ彼女は私にこんなことを言ってくれた。

 

「蓮ちゃんの今までの軌跡が見たい」

 

ん?軌跡?

その言葉がとても嬉しかった。

私は勇気を振り絞って、過去作品を全て彼女に渡した。

なぜなら、拙い私の作品を見ても笑ったりするような人ではないと、直観的に信じることができたからだ。

同時に、現在に至るまでの「軌跡」を見て、客観的な意見を言って欲しかったのだ。

 

 

それからしばらくして、彼女から連絡を戴いた。

直接私に感想を伝えたいからということで、電話してくださった。

結論から話すと、とても良かったということだ。

 

「蓮ちゃん、この本、本当に良かったよ!タイトルを変えて、綺麗にデザインを施して発売すればいいと思うよ!」

 

私は『氷の楽園』という作品については、独自の考えを持っていた。

この作品は、眠らせるのは勿体無いが、堂々と発表するには稚拙すぎるのではないかということだ。

だが、読んでいて心地が良く、涙する場面もあって、自己満足はしていた。

たった四ヶ月でここまで書けたのだから、もう少し手を加えればきっといい作品になるだろうと考えていたのだ。

四ヶ月一気書きした当時、とても忙しかった。

ほぼ毎日ホステスとして働いていた上、毎日ブログを書いていて、本当に時間がなかった。

でも、ホステスの仕事を辞めるためには、本を出すしかきっかけがないように感じていた。

勿論、収入面では雲泥の差がある。

しかし、当時の私はホステスの仕事が嫌で嫌で仕方がなかったのだ。

だから「なにがなんでも」というような気持ちで、走り書きしたのだった。

そのようなことも彼女にも伝えた。

 

「中身はこのままでとても素晴らしいと思う。蓮ちゃんの人として、女性としての姿が鮮明に伝わってきて、鮮やかな作品だった」

 

正直に言うと、この作品は女性の方が支持してくれた。

男性には、主人公の心情があまり伝わらなかったのかも知れない。

かといって、男性にも支持してくれた人はいたが、今回直接電話で感想を事細かに聴けたことは、私の精神的な支えとなった。

嬉しかったし、心の底から救われた想いだった。

せっかくだから、『ロックンローラー』の販売が落ち着いたら、私の「軌跡」として、この作品を発売しようと思うに至った。

 

 

彼女はとても感受性豊かで、読解力が半端ないなと感じた。

痒い所に手が届く。

そのように感じることができる解説に涙しそうになった。

ここまで作品を汲んでくれれば、書いた本人である私としては、安堵感に満たされる。

そして、隅々まで読んでくれたこと、お忙しい中電話をくださったことにとても感謝した。

 

 

ロックンローラー』の後は、書きたいことが幾つかあるので、それらをまとめようと思っている。

しかし、今回感想を伝えてくださった彼女が読んだ本を公にするのが先になるかも知れない。

絶賛してくださった彼女に敬意と感謝を示したかったのと、発売を待っていて欲しいという想いでこれを書かせてもらった。

 

 

当時は、称賛の声ばかりではなかった。

批判的な意見も多数あったが、文章を書くということを止めなくて良かったと心から思えた。

そして、彼女に勇気を出して自分の「軌跡」を見せてみて正解だった。

何事も勇気一つでこんなに見ている世界が変わるなんて。

もしかしたら、私はほんの少し自分を肯定してもいいのかも知れないなと思えた。