美容室でカラーリングを終えた私は暑さのあまり隣町のダイニングバーでキンキンに冷えた生ビールを飲んでいる。
氷ジョッキは神である。
店内喫煙可能なこの店。
長居できるので、度々訪れる。
外は暑くて、なんと二十五℃。
あっという間に生ビールが空になった。
連休中ということもあってテンションが高い。
しかし、まさかこんなに暑くなるとは思わずに冬服で来てしまい、バテバテだ。
イトーヨーカドーの中にある隠れ家に直行して正解だった。
ここでこれを書いてから帰ることにする。
テンションが高いので、調子に乗って色んなことを書いてしまいたい。
元気な時とそうじゃない時で内容にブレがあるが、私はブレていない。
いつものようにサーモンカルパッチョと生ビール。
帰ったらパックしながら新作『もち吉の願い』を書く。
目標は取り下げない。
今月は二十二日に『文学フリマ東京』というイベントがある。
自費出版した人が集まるのだが、その辺の人には負けない自信がある。
自慢じゃないが、私は処女作をアメブロだけで三百冊売った女だ。
デザインなし、編集なし、校正なし。
ただ印刷しただけのものをドカドカ売った。
かれこれ六年ほど前になるだろうか。
それ以来、年に一冊のペースで自費出版している。
どれも三百冊以上の売り上げがある。
出版社に頼ることなく、オリジナルのスタイルで発表してきた。
無名の人が自費出版しても、出版社に頼らなければ売れる部数はたかが知れている。
だから私は誰にも負けない。
処女作『破壊から再生へ』はとある出版社を通して再出版した。
しかし、金がかかっただけ。
確かに全国書店には流通してもらったが、結局編集も校正も私が一人で行った。
何のために出版社を通して再出版したのかよくわからない。
そこで、やはり自力で発表しようと制作したのが『ロックンローラー』だ。
これは人間の悪を暴く問題作。
欲望と闘う主人公加奈子が繰り広げる長編小説であり、私の私小説でもある。
書くことに出会うまでの半生を綴った衝撃的な愛と涙の物語だ。
多くの人が、ラストシーンに鳥肌が立ったと言っていた。
『ロックンローラー』は、編集、デザイン、イラスト、写真をプロフェッショナルな仲間にお願いした。
校正に関しては私が自分でやった。
めちゃくちゃレベルの高い作品に仕上がった。
制作費もかなり掛かったが、それに相応しい仕上がりになっている。
一気読みさせたいという私の目論見は見事に的中。
ほとんどの人が一気にラストまで読み切ったらしい。
つまり、私の作品は、自費出版とは思えないクオリティの高さと、圧倒的な読者の数を誇る。
私は自費出版ではもうやり尽くしたと言ってもいい。
これからも自費出版でもいいのだが、やはり多くの人に読んでもらいたい。
時代を、世の中を、風向きを変えたい。
文学フリマ東京に来る人々は、橋岡蓮の存在を知らない。
しかし、脅威であることは間違いない。
私は私ほどオラオラで生きている女を知らない。
オラオラで生きるとはどういうことか?
無敵だということだ。
介護職ではこてんぱんに叱られて、毎日ビクビク泣きそうになっているものの、職場の先輩は私の本当の姿を知らない。
だから、叱られてやっているのさ。
先輩達の威厳を保つために、負けてやってるのさ。
私が角を出し、正論を振り翳せば誰もが私に負けるとわかった上で。
私の舞台は、介護職ではない。
あくまでも、物書き橋岡蓮なのだ。
これから堂々たるデビューを控えて煮えたぎっている女。
東京か、地方か、どうでも良くなってきた。
どこへ行こうが、私が世の中にとって脅威的であることに変わりはない。
ケセラセラで生きて行けばいいのではないか。
私のことは別名『危険人物』と呼ばれている。
危険な存在であることは覚えておいて欲しい。