nakanakadekinai's diary

単なる日記でもなければ、単なるエッセイでもない

それはそれ、これはこれ

美容室へ行ってきた。

ストレートパーマとカラーリングをしてきた。

埼玉県に来てからずっとこの美容室一筋である。

理由は丁寧な仕事にある。

それだけではない。

かれこれ五年間通っているので、私のことは大体知ってくれている。

阿吽の呼吸ができるので、居心地がいいのである。

まるで幼い頃から付き合いがあった親戚のお兄さんみたいだ。

約二ヶ月に一度しか行かないが、安心するのだ。

過去の話はしたことがない。

離婚した、という事実を伝えただけである。

お兄さんも訊いてこない。

そこが居心地の良さに繋がっているように思う。

しかし、何でも知っているお兄さんだからと通う背景には、やはり私の寂しがり屋な一面があるのだろう。

久々に実家に帰った気分になれるのは、私には親しき『兄弟』がいないからかも知れない。

実の弟と疎遠なことも、本当は寂しいのだろう。

結婚して親戚が増えたことは嬉しかったからなぁ。

普通なら敬遠する義母まで、私には親が増えたようで、有り難い存在だった。

そう考えると、離婚したことは自由と引き換えに寂しさを得たことにもなるのだ。

 

 

自由だと感じるのは行動に制限がないところだ。

時間を気にせず楽しく飲み歩きをすることができる。

ところが美容師さんもこう言っていた。

 

「お一人で生活なさっていると昼夜逆転しませんか?」

「それどころか毎朝五時に起きてSNSをアップするので、早く寝るようにしています。早い時は二十一時前には寝てしまいますよ!」

 

美容師さんは驚いていた。

何故私が五時に起きるかは言うまでもない。

皆が仕事へ行く前にアップして、読んでもらいたいからだ。

更に、それを日課にして欲しい。

だから前の日飲みに行ってどんなに朝が辛くとも、目覚まし時計は朝五時だ。

この習慣は、意地でも続けるぞ。

崩してしまえば、全てが崩れると思っているからだ。

 

今年は旅行へ行きたいという話もした。

 

「格安チケットは大抵が成田空港発ですよ」

「マジですか?前泊しなきゃいけないなら格安チケットの意味がないですなぁ」

「埼玉県からは始発に乗っても、成田までは厳しいかも知れませんね」

 

それを聞いてちょっと凹んだ。

成田前泊は阿呆らしいよ。

羽田空港から普通便で行くなら安くはないよな、などと考えた。

それでも行きたいと思うのは、やはり最高の作品に仕上げたいからだ。

当たり前だが、パソコンを持って行く。

各地で旅をしながら感じたことなどを作品に反映させたいのである。

私が過去にそうしていたように。

そのために多少の自己投資をするのは必要経費だと思う。

最近は、極力外出するようにしている。

美容室は私にとって最高の贅沢。

決して安くはないからだ。

その代わり美容師さんを信頼している。

それに応えて極上の時間を提供してくれる。

本当はマメに通いたいが、経済的にそうもいかない。

飲みに行かなければいいのだが、そういう問題でもない。

それはそれ、これはこれである。

 

 

美容師さんは作品創りの話も熱心に聴いてくれる。

細かいところにまで興味関心を抱いてくれる。

そういう人が旦那様だったらどんなにいいだろうか。

私のことが気になって仕方ない人だったら、何でも話してあげるのに。

私からは作品の話はしない。

いつも向こうから話題を振ってくれる。

美容師さんの奥様も熱心に聴いてくれる。

だから私にとってはまるで家族のようだ。

この手の話は美容師さんが聞いたら喜ぶだろうに。

 

 

ここまで書いて煙草に火を付けた。

陽が長くなったとはいえ、辺りは暗くなっていた。

それなのに何故この居酒屋のカウンターがガラガラなのかは、私にもわからなかった。

これから整骨院なので店を出ることにした。

もう一口深く煙草を吸ってから。