まず、結局二十五歳の女性は会社に来なかった。
どうやら営業職というものに罪悪感を抱いたとのこと。
なぜ、そう思わせてしまったかについて会議があった。
私は私なりの意見を述べた。
そもそも、私は二十歳過ぎてから魚屋で店頭販売をしていた。
その日仕入れたものはその日中に捌かなきゃ、従業員が買わなきゃならないシステムの市場だった。
社長が徹底的に鮮度にこだわっていたからだ。
だから死に物狂いで売り捌いた。
勢いと、熱意。
そして、めちゃくちゃ美味いアピールと、調理方法の説明をした。
とにかくその当時の経験が、今の仕事に活かされている。
つまり何が言いたいって、年齢ではなく、人生経験だってこと。
会社に来なかった二十五歳の女性は、営業職はできないだろう。
それこそどこへ行っても。
しかし、私達受け入れ側は、面接や研修のやり方を改めることにした。
まず、多くを教えないようにする。
私は、入り口の時点で『営業とは』を教えた方がいいと言った。
ところが皆が半分納得しなかった。
ハードルが上がりすぎるからだそうだ。
実は、散々販売や営業の経験がある私でも、多少なりとも人から金を取ることの罪悪感はあった。
でも、それを上回るのは達成感と自信。
自社の商品を信頼している。
経験を積むに従って、罪悪感など消え失せた。
今では件数を上げることが喜びとなっている。
ま、あれだけ嫌だったのだから来なくて良かったよ。
次は四日、また別の新人が入ってくる。
また来ないかも知れないけど。