nakanakadekinai's diary

単なる日記でもなければ、単なるエッセイでもない

移ろいやすい生き物

雨の中、プレゼントを抱えてルンルンで職場へ向かった。

入り口で誕生日だったスタッフに会ったので、ドヤ顔でこう言った。

 

「誕生日プレゼントを買ってきました!」

 

先輩スタッフは、雨のせいか疲れているように見えた。

 

「あ、ありがとう。気を遣わなくていいのに…」

「いやいや、張り切って買ってきましたよ!」

「中身は何なの?」

「ラーメンと焼肉のたれ!」

「あ、いいじゃん!」

 

それでも声が疲れ切っていた。

何かあったのかなぁ、そんな気持ちを抱いた。

その後、職場までエレベーターで上がって行ったらやはり空気が重たいことを瞬時に察してしまった。

なんとなく、嫌な予感。

そこに女性スタッフが入ってきた。

 

「おはようございます!お土産を買ってきました!」

 

すると、女性スタッフは振り返ることもなかった。

鏡で髪の毛を整えながら、「何?」と云った様子だった。

 

「お土産なんてどこか行ったの?」

 

隣町の駅前とは言えなかったのでこう言った。

 

「新しくオープンした店があったので、美味しそうだったものを買いました」

「そうなんだ、ありがとう」

 

声が暗いのである。

職場全体がピリピリしていて、それは終了時間まで続いた。

私が休みだった間に何かあったのだろうか?

結局真相がわからないまま、帰宅する羽目になった。

誰にも訊けず、また、誰かに訊ける立場ではないことを悟った。

 

「私なんかしました?何故、皆さんピリピリしているのですか?」

 

そんなこと訊けるわけもない。

 

 

てか、皆のことが大好きだと言ってルンルンで職場へ行った私ってバカじゃない?

どんなに皆のことが好きでも、こんな重たい空気を醸し出された日には、ミスも増えるわ!

一言言ってやりたかったが、先述したように、そんな立場ではない。

でもさ、ぶっちゃけ、嫌だよね。

自分の知らないところで何らかの話が成されて、満場一致で私に冷たくするなんて。

スタッフの発する言葉はこの日一日刺々しいものだった。

訳が分かっていない私は、ハラハラする気持ちが段々と苛立ちに変わり、帰る頃には泣きたくなっていた。

私が調子こいて、先輩にシフトを増やして欲しいみたいなことを言ったからだろうか?

はたまた、細かいミスの連続が堪忍袋の緒に障ったのだろうか?

あ~やだやだ。

何かあれば直接言ってくればいいのに。

中には、私が利用者さんと体操をしている最中に、遠くから私を睨めつけ首を傾げるスタッフもいた。

めちゃくちゃ感じ悪い。

流石に、先ほどのは一体何だったのかと訊けば良かった。

 

 

あれだけプレゼントを買って喜んでいた私は落胆しながらヘトヘトで帰ってきた。

人間という生き物はその日の気分でこんなにも変わるものなのだろうか。

先週までスタッフ達の雰囲気は良かったはず。

何かあったとしか思えないが、それを教えてくれる人はいない。

なんとなく寂しくなってしまった。

そしてふと思ったことがある。

私は皆を信頼しているけれども、私って皆から信頼されていないのだと。

そりゃそうだ。

ある日突然やってきた非正規雇用労働者の私。

最初から疑いの眼差しでしか見られていないだろうに。

ヤバヤバ、なんだか卑屈になってきたぞ。

それでもこんなことがよぎる。

 

「皆だって私がいなくなったら寂しいくせに」

 

それでもこの疲れはどうしてくれるのか。

単なる寝不足か?

いや、明らかにメンタル的疲労感だろう。

厳しくしなければ仕事を覚えないと思っているのだろうか?

だとしたら大間違いだ。

まだまだ皆、わかっていないな~!

私が如何に脆く繊細な人間であるかということを。

そして、この仕事に生き甲斐や遣り甲斐を感じていることを。

どうすればそれが伝えられるのかもわからぬまま。

かといって、諦めの気持ちはまだない。

人間なんて移ろいやすい生き物である。

もう少しこのままここで頑張ろうと思う。