私服通勤なので、私服が必要だ。
給料が入ったら、渋谷か北千住に買いに行かなくちゃ。
本当は今すぐ買いに行きたいのだが、行く暇がない。
休みの日はバイトを入れてある。
当分の間、休みがない。
しかし、来月は九州へ旅行するので一週間休みを取ってある。
自然に触れ、今度こそ星空を見て、海の幸を堪能したい。
目的は、新作の執筆。
気に入れば第二の書斎にするかも知れない。
行ってみないとそれはわからないが。
ハウステンボスとか、そのような観光には興味がない。
観光はせず、のんびりと執筆できればそれでいい。
行きたいところは山ほどあるが、休養するために行くのである。
疲れを癒すことが先決だ。
それにしても、三月の九州、何着て行けばいいのやら。
会社を出たら雨が降っていた。
喫煙所で煙草を吸っていたら、ちょうどいいタイミングで友達から電話が鳴った。
「投稿読んだけど、おにぎりと立ち食い蕎麦だけでは栄養失調になっちゃうよ?」
雨が降っていたのをいいことに、焼肉屋に入ってハイボールを飲みながらこれを書いている。
なんやら、目の前でお兄さんが焼いてくれてた。
大して高い店ではないのだが、なんというサービス。
隣の席では、ビビンバを混ぜてあげている。
エプロンとスマホカバーまでくれる。
最初はびっくりしたのだが、よく見たら看板に書いてあった。
『一生懸命、焼きます!』
焼肉屋の店員さんも忙しそうだ。
こんなに忙しいのなら、コールセンターの方がいいなどと思ってしまう。
私は契約ノルマを達成し、胸張って会社を後にした。
やっぱり私の声って、多少棒読みだが、人の心に届くんだ!
実際私から電話が掛かってきたら嬉しいだろう。
私なら嬉しいよ。
私から化粧品を買いたいよ。
たまにカミカミだけど、一生懸命な人から買いたい。
頭の中ではずっとサッカーのことを考えていた。
私がフォワード、他のスタッフが、チームメンバーだ。
入ったばかりなのに、調子に乗りすぎだろうか?
細かいスキルを身に付けて、ゴールへと持って行く。
私はフォワード、皆からのフォローを受けて『点』取ってなんぼ。
実績が上がらなかったら、帰らされた人がいてビビった。
まだ三時だよ?
マジかよと思った。
「橋岡さんは残ってください」
それもマジかよと思った。
選手交代されなかった!
胸を撫で下ろしたと同時に、少々ヨッシャという気持ちになった。
私はスタメンでい続けなければ。
フルタイム出場できる選手でいなくては。
結局、契約を取りまくった私は拍手喝采を浴びた。
ハイボールを飲んでいたら、少々眠たくなってきた。
最後にテールスープを頼んだ。
「こちらはとても辛いです」
そう言われたので、ハイボールを追加した。
栄養を摂るためだったのに、結局飲んでるし。
ただ、毎日こんなことはしていられないので、食生活をなんとかしなくては。
ただ座って営業しているだけだから、ただ食ってたら太るしね。
焼肉屋を出ると雨が止んでいた。
慌ててビニール傘を買わなくて良かった。
どんなにスタメンのフォワードでも、やはり帰りはちょっと寂しい。
かといって、チームメンバーと焼肉屋へ行く気はしない。
これから一時間半掛かるのかと思うと、気持ちが萎える。
テールスープをテールクッパにしなくて良かった。
テールは全然入っていなかった。
だけど、野菜はたっぷり食べられた。
隣のカップルが少し羨ましかった。
カルビクッパを分け合って食べている姿が微笑ましかったからだ。
とはいえ、街の中にいると他人が気にならない。
私は、一人でいても、賑やかそうにしている他人がどうでもいいのである。
私の存在は珍しくないしからだ。
そういう意味で、私を放っておいてくれる都会が好きだ。
星空に歓迎されたいけどね。