さらに無敵になるために、イヤホンでロックを聴きながら通勤するようになった。
今更、イヤホンデビュー。
基本的にチバユウスケを聴いている。
なぜこんなに素晴らしいことをもっと早くやらなかったのか?
薬と慣れない仕事のせいでバタくそに疲れていてそれどころじゃなかったからだ。
デビューの時期に遅い早いはない。
『パーティは終わりにしたんだ!暴かれた世界は〜!オレンジのハートは〜!抱きしめながら行け〜!』
やっぱ最高なり。
益々のドヤ顔!
何でもかかってこい!
どいつもこいつもなぎ倒してやる!
とはいうものの、私のようなセンチメンタルなヘタレは会社の誰も誘えないのである。
元気になって、誰かと飲みに行きたいのに。
誘われるのを待っているけど、誰も誘ってくれない。
マジで近づくなオーラが出ているのか?
堂々としすぎなのだろうか?
かといって女と飲みに行ったってつまらん。
どうせ私の会社にはタメ口女しかいない。
とはいえ男と飲みに行ったら何があるかわからん。
わからんのかい?
会社の人に手を出したらクビになりそう。
あぁ怖い!
せっかく手に入れた直接雇用。
手放すわけにはいかないのだ。
当分お世話になるつもりだから。
実はノルマを達成できなかった。
そんな私を見て、必死にノウハウを叩き込もうとする先輩がいた。
歳は私より圧倒的に下だが、こんな私なんざを育てようとしてくれているなんて。
思わず泣きそうになった。
その先輩がなんて言ったと思う?
お客さんに対してこう言ったのだ。
『綺麗な声だからいつまでも聴いていたい』
キャ〜!
私がお客さんだったら即買っちゃう!!!
海産物食べたくなくても買っちゃう!!!
本気でお客さんにそう言ったのだろうか?
私もそんなこと言われたい!!!
いつまでも聴いていたいって、何それ?
反則でしょう!
隣で聴いていてドキドキが止まらなかった私は単純なのだろうか?
案の定そのお客さんは先輩から海産物を買っていた。
そりゃ買うよな!
お客さん羨ましい!
嘘でもいいから私も言われたい。
もしかしたら『いつまでも』ってキーワードに弱いのかも知れない。
チバユウスケが歌う『アイラブユー』みたいなもんだ。
私は何度リピートして、アイラブユーを言ってもらった気分になったことか。
どうせなら死ぬまでにその類の幸福感が沢山あるといいよな。
いつまでも蓮さんを見ていたい、なんて言われたらもう他のことなんてどうでもよくなる。
言われてぇ〜!
そんなこと言ってくれる人いないよ。
思っているだけで言わないのはそれこそ反則。
やっぱりこの世は口の巧いヤツが勝つのだろうか?
私などは、口の巧さにまんまとやられるタイプかも知れない。
あ、だから騙されやすいのかも。
しかし、言い方を変えれば素直なのだ。
自分もコールセンターで働いているくせに、営業マンやオペレーターに騙される。
貴女だけ、今だけ、などというありきたりな営業トークにまんまとやられる。
自分に向けられた言葉なのだと勘違いする能力に長けているのだろう。
それは損なのか?得なのか?
私は敢えて得だと思いたい。
むしろ天然記念物、人間国宝だと思いたい。
誰かの前では思いっきり素直でいたい。
ちょっと見えてきたぞ。
理想的なあるべき姿ってヤツ。
そうそう、私には血のつながっていない親戚のような存在が数名いる。
友達と呼ぶべきなのだろうが、それにしては距離が近い。
老若男女問わずなのだが、家庭運のない私でもそういう人々には苦労しないようだ。
中にはとんでもなく真面目な人もいるが、こう見えて私も実は真面目。
素直さだけではなく真面目さ健気さにも気づいてくれる人がいればいいのに。
あぁ、それにしてもいつまでも聴いていたい。
チバユウスケの歌声を。