先月一ヶ月、成長していないと先輩から言われて落ち込んでいる。
「橋岡さんはいい人からしか契約を取れてないよね」
この一言がグサッと来て、どっぷり落ちてしまった。
「このままじゃ海産物は売れないよ、てか、海産物販売に向いている人じゃないよね」
更にグサグサと刺さり、私は声も出なかった。
え?私ってこの一ヶ月何していたんだろう?
久々に本気で泣きたくなった。
ウルウルしていたかも知れない。
最近さ、気づけば私って、励まされるだけの人になっているとは思わないか?
本来は人を励ますこともあったはずなのに、そういうことがなくなったように感じている。
確かに営業職でメソメソ、成績を上げられなくてメソメソ。
先輩に振り回されてメソメソ。
ダサすぎる。
情けなさすぎる。
カッコ悪すぎる。
昼休みに私は先輩と元ホストの前でこんなことを言ってみた。
「いや〜美味しいものが食べたいなぁ〜」
すると元ホストがニタニタしながらこう言った。
「コイツに連れてってもらえよ」
「は?俺、金ないもん」
「え?じゃあ安い居酒屋でいいから、割り勘でいいから連れてってください!」
私も先輩をおちょくるようにそう言ってみた。
「ヤダ、俺、金ないもん」
ダメだこりゃ。
照れてるのかわざとなのか知らないが、ヤダの一点張り。
「皆で行くならいいけどさぁ〜」
「じゃあ皆で行こうよ〜」
「う、う〜ん」
こりゃ男としても職場の先輩としても失格やん!
ましてや、私を奈落の底に突き落とすような発言の連発。
これだから今までずっと一人だったんだよ!
なんか、本気でどうでも良くなってしまった。
恐らく、度胸も器もないのだろう。
もしくは、一人でいることが一番心地良いのかも知れない。
私が寂しい想いを抱えて生きてきたことなんてわからないだろう。
私は基本的に私への理解が無い人へは近づかない。
ゴキブリも先輩も大差がないように思えた。
ゴキブリはゴキブリで、私をからかっているのかこんなことを訊いてきた。
「橋岡さん二千三年って何やってました?」
「あ?魚屋だね」
「あ、その頃は魚屋に入れたんですね?」
そこで社長は首を突っ込んだ。
「おい、お前、なんでそんなに橋岡の歴史を訊きたがるんじゃ?」
「え?いや、あの、深い意味は…」
ミレニアムで廃人だった後のことがゴキブリなりに気になって仕方ないんだろう。
社長は、そんな私とゴキブリのやり取りを聞いていて、こんなことを言った。
「橋岡って、散々苦労して寂しい想いをしながら生きてきたんやろな」
流石!!!!
流石、社長!!!
よくぞわかってらっしゃる!!!
そうでしょう、そうでしょう。
「私って可哀想な人間なんです」
「お前、そうやって自分を可哀想だと思えることはいいことだ!いっぱい自分を褒めてやれ!」
流石でらっしゃいます!!!
社長も人間だった!!!
私も見る目があった!!!
この会社に入って良かった!!!
先輩なんてどうでもいい。
私、ヘタレ営業マンだけど仕事頑張る!!!
社長に着いて行きますわ!!!
救われたり、落ち込んだりしながらも、何とか毎朝電車に乗る。
それにしても私にメソメソは似合わないらしい。
私ってとってもナイーブで繊細で神経質な人間なのだが、不思議とギリギリラインで復活するようになっている。
まぁ、ヘタレ営業マンからスーパー営業マンになってやれる日が来るかも知れない。
その暁には、また自分を頼もしく思える日が訪れるだろう。
とにかく酷暑。
バタクソに疲れたけど、確実にステージは変わったような気がする。
よし、このまましばらく生き続けてみよう。