nakanakadekinai's diary

単なる日記でもなければ、単なるエッセイでもない

期待するな希望を持て

結局、何事もなかったようにタメ口ちゃんは出社していた。

社長も何事もなかったように出社していた。

朝礼では、ゴキブリの話を全体周知として話していた。

 

「実はコンプライアンス違反があったからウチの会社は辞めてもらった」

 

 

タメ口ちゃんはやたらと私に謝ってきた。

 

「迷惑かけてごめんなさい」

「いや、私は迷惑じゃない」

「私のこと怒ってね!」

 

は?

やはりただの構ってちゃんか!

だから私はこう言った。

 

「心配してない」

 

すると苦笑して帰って行った。

 

 

悔しいがノルマは達成できなかった。

どうやら一日のノルマが五万六千円に上がったようだ。

私は午前中二件取り、二万八千円を売り上げたが、そこで止まってしまった。

見込み客の回し方が下手なのだろう。

やれやれ。

先日バックれたタメ口ちゃんは、ノルマは達成できなかったみたいだがそこそこ数字を出していたみたいだ。

 

 

社長が朝礼でゴキブリのことを報告した後、皆にこんなことを言った。

 

「一番自分に向いていると思う仕事はなんだ?」

 

一人ずつ名指しで当てられたのだが、皆、答えられなかった。

 

「何かわかんないっすねぇ〜」

 

するとタメ口ちゃんがこう言ったのである。

 

「私はニート

「は?お前、ニートをナメてるだろ!」

 

社長がイラっとしていた。

 

「橋岡は何が向いていると思う?」

「私は対面販売です!」

「お前、さすがだなぁ!電話じゃないんだよな!」

「そうです、一対一の対面がいいですね!」

「お前は強い!対面できるヤツは強いよ!」

 

さらにこう続けた。

 

「橋岡蓮を他の案件に入れるのは勿体無いんだよ」

 

え?勿体無い?

キター!!

 

「誰でもできる案件じゃなくて、海産物販売とか、橋岡しかできない案件に入ってもらいたい」

 

なんだよ、なんだよ!

社長はちゃんと私のこと評価してるじゃないか!

 

 

 

十月末には社員旅行を計画していて全員を伊豆へ連れて行ってくれるそうだ。

そのために、皆、九月をなんとか頑張ってくれ!と言っていた。

さらにこんなことも言っていた。

海産物販売だけではなく、他の商材においても我が社は日本でナンバーワンなのだとか。

それに対する自覚と誇りを持つようにと言われた。

ということは、私が携わっている商材で、私はトップクラスの売上を上げているわけだ。

あんなに営業や数字が苦手だったのに、半年間で目まぐるしい成長を遂げたことになる。

 

 

社長くらいになると、社員に対してこう思っているだろう。

 

『期待はしないが希望は捨てない』

 

いやいや、私に対しては期待しているかも知れない。

対面販売が得意というのは、口先ばかりではないということだ。

この会社がもしコールセンターという枠を飛び越え、対面で売る商材を抱えたとしたら私を頼ってくれるかも知れない。

しかし、その時私がこの会社にいる保証は無いわけで。

私は私でやりたいことがある。

そのために、この会社に居させてもらいながら、腕を磨いているのである。

 

 

私くらいになると、社長や皆に対してもはや全く期待していない。

でも、希望を捨てたわけではない。

社長に言えと言われて言っているだけだと思うが、元ホストがこう言っていた。

 

「自分の意見を言いやすい職場づくりを目指したい」

 

ほほぉ。

誰かが、今の職場は意見が言い辛いと言ったのだろう。

タメ口ちゃんが社長に言ったに違いないが、私は自分の意見はガンガン言っているけどね。

そう、お気づきの方もいるかも知れないが、私にはさほど悩みがないのである。

どうすれば売り上げが上がるかもわかっている。

メンタル的にまだまだヒヨコで実行できていないだけだ。

一言で言うならば、達観している者に悩みはない。

つまり、達観してしまえば楽になるということだ。

難しいことを言っているだろうか?