だが、バタクソに疲れている。
取り敢えず、部屋を片付けまくって洗濯をし、とあるライブ配信のアーカイブを観たり勉強会の動画を観て復習したりしていたら夜になった。
昼は出前を取ったので家からは出ていない。
眠たくもないし、酒を飲みたい気分でもない。
だが、もう少し暗くなったら散歩がてら飯でも買いに行こうかなと思っている。
部屋が綺麗になると、少しばかり心が落ち着く。
このレベルならタメ口女ちゃんを招いてやってもいいかなと思える。
先日はご飯へ行くのが延期になったので、近々行くだろう。
ま、我が家に来るのはいいが、谷塚はこれといって何もない。
ただ我が家は無駄に広さはあるので、家飲みをしても良い。
それにしても、私って面倒見よすぎないか?
義理堅い私としては、一度泊めてもらったら御礼に泊めてあげなきゃならないと思っているのである。
タメ口ちゃんからしたら、わざわざ何もない谷塚まで行きたいとは思っていないかも知れないが。
でもさ、たまには田舎に遊びに来るのも悪くはないと思う。
私がタメ口女ちゃんの立場なら、プチ旅行みたいで楽しむことができる。
ゴキブリは何でも楽しむことができる私を尊敬しているそうだ。
私からしたら、どいつもこいつもヘタレなのである。
私だってノルマと闘っているけれども、数字が上がらなくてもそこまで気落ちしなくなった。
今月は全然成績が伸びず、もっと落ち込んでもいいのだが、落ち込まない。
ところが、タメ口女ちゃんもゴキブリも成績に左右され過ぎである。
皆、会社から家も近いし、若いし、何の問題もないはずだ。
それなのに、生き生きしていないように思う。
せめて私の前では楽な気持ちになってもらいたいのだが。
逆に私にはこの職場で働くにあたって目標がない。
社長と元ホストへの恩返しっていう目的はあっても、何がなんでも数字を上げなければと追いつめることがない。
大体中間にいて、トップの気持ちにもビリの気持ちにも寄り添えればいいなという甘い考えを持っている。
だから数字が上がらないのかも知れない。
その代わり、会社にいる全員と対等に喋ることができる。
どうやらタメ口女ちゃんは、上司達からチヤホヤされ、自分はトップでいたいようだ。
だから最初の頃は私にマウントを取ってきたのだろう。
他の人が褒められたりしようものなら、鼻の穴を膨らませて怒っている。
あれじゃあ疲れるよな、と思って静かに見ているのである。
コールセンターで売上伸ばしまくって、タワーマンションに住むのが夢だそうだ。
男の力は借りたくないとのこと。
私にはそうい夢や目標もない。
でもタワーマンションに住むことはないだろう。
元々欲がない私だが、物質的なものには憧れがない。
車にも興味がないし、高い服だって要らない。
何度も言って恐縮だが、欲しいものは納得。
そして風と光に圧倒されることである。
金は最低限度あればいい。
何者にもなりたいとは思わないし、憧れも理想もない。
ただ好きな人の隣で笑っていられる日が一日でも多くあればいい。
ぶっちゃけ行きたい場所もない。
『誰か』が迎えに来るまでは、私はこのまま谷塚にいる。
そして池袋へ通う生活を続ける。
それがいつまで続くのかはわからない。
私が唯一決めたことは、どこへも行かないと云うことだ。
かといって家具は買わない。
いつ何時お迎えに来てもらえるかわからないからだ。
どんなに金があっても家は買わない。
どこへも行かないけれども、いつでも動ける身軽さを維持していたい。
一人旅にも興味がない。
ここまで来ると、映画にも小説にも興味がない。
かといって人生を諦観しているわけでもない。
耳を澄ませ、目を見開いて、これから先を見つめているだけ。