罰ゲームでプロントへ寄った。
ノルマ達成できなかった刑なのだ。
悔しすぎる!
あと一件取れれば達成できたのに。
生ビールを豪快に飲み干した。
ハァ、しつこいようだが、悔しすぎる。
二連休を前にして、予定もないし、元ホストに連絡したら隣の会社の社長と飲んでるって言うし。
もっと早く言ってくれればって言ってたけど、誘われてないもん!
私が暇人であることがバレる。
いや、暇人で、一緒に飲む友達もいないことはバレバレだ。
休憩中、こんなことを訊かれた。
「あの子と仲良いの?」
タメ口ちゃんのことである。
「たまにご飯行くけど、それとこれとは別」
「仕事は別ってことか」
「そう、協力はできない」
「なるほど」
元ホストは、私とタメ口ちゃんが手を取り合って件数を挙げられるようになればいいと思っていたそうだ。
だが、それは無理な話。
私にライバル心剥き出しなのは言わなかったが。
腹の中では、お互いに、
「コイツくたばればいい」
そう思っているのである。
私からしたら、タメ口ちゃんという女の『底』が見える。
その逆は、この人深いな、ってヤツ。
噛んでも噛んでも味が出るってヤツ。
なぜそんなことがわかるかって、トークでわかる。
コイツ浅いなぁ〜って思ってしまうのだ。
例えば、お客さんと一緒になって私の悪口で盛り上がっている録音を聴いてしまったことがある。
底が知れるなぁ〜と思ってしまった。
どんな悪口を言っていたか、想像できるだろうか?
カニ味噌は要らないと言ったお客さんに、カニの足を売ったら、味噌が入っていないと、別の日に営業電話をしたタメ口ちゃんに文句を言っていたのだ。
「え?カニ味噌が入っていないカニの足を売りつけられたんですか???」
「そうなのよ、あの女、三回も電話してきて騙したのよ」
「それは酷いですね、私、そういうヤツのせいで私まで信用を失うなんて」
「でしょ?でしょ?酷いでしょ?」
「ヤダ~、信じられない、酷い女に出会ってしまいましたね」
「だから、もう二度とお宅からはカニは買わないと決めたの」
「そうなりますよね、そういう女がいて、私も怒っているんですよ」
は?
この業界、全て録音が残っているので、私は自分がそのお客さんにカニの足を売った時の録音を聴いてみた。
ほらね、カニ味噌は要らないって言ってるじゃん。
私なら、そういうお客さんにはこう対応する。
「え?カニ味噌お好きなんですか?でしたらめちゃくちゃ美味しい毛ガニが水揚げされてまして、是非食べてみてください」
結局、タメ口ちゃんは悪口で盛り上がっただけで、カニは売れなかった。
そういうタメ口ちゃんのことを、元ホストは見逃さなかった。
「お前、雑談して長電話するなら、きっちり売れよ」
そうだ、そうだ!
長電話しても、自分の手柄にしなければ、なんの意味もない。
タメ口ちゃんは自分でトークが巧いと自惚れしていて、自分の雑談力に酔っている。
しかし、お客さんって云うのは、あざといタメ口ちゃんを見抜くのである。
この人から物は買えないとわかるのである。
元ホスト曰く、タメ口ちゃんは通話時間が圧倒的に長い割りには件数に反映されていないと苦言した。
一方、私は短時間で決着をつけるのが得意である。
むしろ、無駄な雑談は省いて、いきなり交渉に入るタイプ。
つまり、通話時間は圧倒的に短いわけだ。
その割には、決めるとこ決めているという話。
あくまでも主導権はこちらにあり、お客さんのペースに合わせるのは素人のやることだ。
以前にも書いたが、人生の場数が違い過ぎるのである。
元ホストにさえ、人生の場数は負けない自信がある。
先輩曰く、北海道出身で魚屋経験のある私は知識も豊富なのだとか。
だとしたら、実力を付けて行けば、もっともっと伸びるのでは。