nakanakadekinai's diary

単なる日記でもなければ、単なるエッセイでもない

信頼の神

まだ月初だというのに、元ホストはパチンコで給料を全額すってしまって、社長から十万円借りていた。

最初、社長に頼みたくないと言われて、本気で焦った。

私、一万円なら貸せるけど、と言ってしまった。

だけど、社長から借りたならいいやと思って貸さなかった。

なんで私は彼女でもないのに、ここまで心配しなくちゃならんのかい。

おまけに風邪引いたとか言ってたので、金がないのにどうやって風邪薬を買うのか心配した。

すると、持っていると言われたので、私は買わなくて済んだ。

嫌や〜、マジで彼女でもないのに、私、何やってんだか。

泣きたいよ、マジで泣きたい。

仕事の帰り道、元ホストと隣の会社の社長は飲みに行った。

私も行きたかったが、連れて行ってと言えず。

無茶苦茶寂しかったので、池袋駅のプロントに寄った。

生ビールを飲んで、レモンサワーを注文した。

酒に逃げるしかない。

しかもノルマが五万八千円に上がった。

私は一万二千円しか売れず、めちゃくちゃ凹んでいた。

だけどさ、こういう落ち込んでいる時に優しくされたらコロッとなりそうだ。

だからこんな日は一人で良かったのだと言い聞かせている。

あぁ、私は都会のお陰で、寂しさや悔しさが誤魔化されているのだと思った。

このまま一人で家に帰り、パソコンに向かうだけの生活はある意味毒である。

案の定、プロントで酒を飲んでいるうちに、置いてけぼり食らった寂しさは消えた。

売り上げを上げられなかった悔しさだけがあるが、前を向くしかなかろう。

ふぅ〜。

 

 

私はわざとこんなことを言ってみた。

給料全額月初にすったことは理由があると考えたのだ。

 

「私の引越し費用稼ぎたかったのね!気持ちだけ嬉しい!」

 

勿論、誰もそんなことは言っていない。

私の完全なる一人芝居だ。

だが、私は『信頼の神』である。

自分のことを好きになってくれた男を疑うようなことは決してない。

だから、未だかつて、浮気されたことなど一度もない。

もしかしたら陰で浮気されていたのかも知れないが、信じ切っているのである。

だから浮気されても気づかないのだ。

つまり、ただ馬鹿みたいに浪費した元ホストはきっと、私のために金を作りたかったのだと思い込んでいるのである。

スーパーポジティブであり、自分の都合の良いように考える。

それがごく自然なことなのだ。

 

 

私ならそこまで自分を信頼してくれた人を裏切れない。

かといって見返りを求めているのではない。

私の心には『信頼の神』が宿る。

だから、元ホストのみならず、誰のことだって信頼から入る。

ただ、それを裏切られると、その人のことがどうでもよくなる。

その程度の人かって見下してしまう。

それだけ傷つきやすい精神も持ち合わせているということだ。

 

 

あぁ、嫌や〜。

悔しさはともかく、寂しさは感じたくない。

ただ、執着しているようでそうでもない。

相手の気持ちが見えるうちはいいが、見えなくなると途端に冷めてシャッターを下ろしてしまう。

ことごとく昔の男を思い出す。

めちゃくちゃ苦労させられたが、死ぬほど好きだった。

私ってそういう運命なのかと思えば神を疑いたくもある。

しかし、使命感のようなものも抱いている。

ただ、何度も言うが、元ホストを選ぶということは、多くのものを犠牲にすることでもある。

私ばっかり真面目に考えてと思うと泣けてくるが、相手の心の中はわかりっこない。

隣の会社の社長に、私のことを相談しているくらいなら可愛いのだが。

 

 

この宙ぶらりんな気持ち、いつまで続くのだろうか。

早く決着つけたいとはいえ、古風な私は、こういうものは男に決断させるものだと思っている。

やらねばならぬことも置き去りにしたまま、ただ闇雲にこうして心情を綴る。

これで数字が上がればまだ救われるのに。

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