二十一時半から予定があった。
「それまで一時間くらい付き合ってよ!」
先日飲みに行った会社の先輩に訊いてみた。
だが見事に断られた。
「やだよ!!」
洗濯したいのだと言われた。
「一人で時間潰せよ!!」
仕方がないから一人で池袋駅前の『大都会』でかけそばを食べて、西口のプロントへ移動した。
プロントは平日の割に混んでいた。
私はブラッドオレンジジュースを頼んだ。
それがいつまで経っても届かない。
すると、店員さんの方から、お待ちください確認します!と言ってくれた。
やがて、私の元へ運ばれてきた。
ふぅ〜、ノルマ達成した日は心地の良い疲れである。
ただ、飲みに行った次の日なので、多少は寝不足だ。
ところが、私の中で途轍もない疲労感が消えた。
なぜだろうかと考えたが、会社を辞めない決断をしたからかも知れない。
どんなに自分の仕事を極めても、仲間との別れを受け入れられるほど私は無神経ではない。
私が『書く』という刀抜きに付き合える貴重な仲間。
私が会社の中でもチョロ子であるにもかかわらず、誰とも一歩進んだ関係にならないのは、失いたくない想いが強いからである。
一人を取れば、他の皆との関係性は崩れる。
わかりやすい例がある。
先日先輩とタメ口ちゃんと焼き鳥屋で飲んだという話をしたら、他の人からこう言われた。
「今度は俺らと一緒に飲もうね!」
勘違い野郎でチョロ子の私は、たちまち嬉しくなって、満面の笑みで思い切り手を振った。
「うん、飲もうね〜!」
こんなに会社が楽しい私は変態か?
いやいや、皆を好きになる術を身に付けているからだ。
ホステスをやっていた頃、指名してくれるお客さんは全員が『彼氏』だったように。
それともう一つ、私には特技がある。
髪型を変えたり、前髪を切ったりした人の変化に気づき、声を掛けることである。
「あれ?眉毛染めたね?」
「蓮さんスゲ〜、皆のこと見てくれてるんだね!」
幸か不幸かウチの会社は男だらけなので、この手の小さな気づきは大変喜ばれる。
別に皆をジロジロ見ている訳ではないけれど、元気かな?という視点なので、細かい変化に気づくことができる。
以前にも述べたが、会社というのは社会の縮図だ。
つまり、会社を制する者は社会を制することができる。
社畜になることと、会社を居場所とすることは似ているようで違う。
もはや私は社畜でもいい。
今冬からシフトが一気に増える。
私も重要メンバーとして扱われるようになる。
社長にそれを言われたから、もしかしたら疲労が消えたのかも知れない。
それを皆に伝えたら、皆も大変喜んでくれた。
上司である元ホストも先輩も歓迎してくれた。
やはり疲労感は心だったか。
精神的なものというか、居場所を再確認した安堵感だろう。
先日私は先輩にこう言った。
「イヤミ、嘲笑い、無視、それ以外は何言っても何してもいい」
「ウチの会社にそんなことする人いないだろ?」
そりゃそうだ。
私の願望としては、やはり皆のサポートができるようなポジションを確保したい。
心病む人もいるのだが、蓮さんがいる日は会社へ行ってもいいと明るい気持ちを持って欲しい。
その傍ら、自分の、自分だけにしかできない仕事を磨いて行きたい。
それが『蓮'sスクール』である。
やがてそれは私の執筆活動にも大きく影響することだろう。
今秋、今冬、来年と、どう変わっていくのか楽しみだ。
しかし、私の根本とやることは変わらない。
プロントにて勉強会の同期生の方とズーム面談をさせて頂いた。
「蓮さんのセミナーも見たけど、文章を書くことと、セミナーをやることに何ら違いはない」
わかってくれる人はわかってくれているという安堵に包まれた。
日を跨いでしまったのに、やはり私は疲れていない。
不思議なものだ。