さすがに四連勤は疲れた。
それでも私くらいになるとノルマを達成した。
目を開けているのも辛く、あくびばかり出るが、こうしてパソコンに向かっている。
休みの前の日はウキウキして夜更かししてしまうものかも知れないが、そのエネルギーは残っていない。
二日連続で、会社では先輩と二人だけの出勤だった。
二人とも安定的に数字を叩き出せたから本当に良かった。
帰りに飯でも奢ろうかと思ったが、お互いに疲れ果てていた。
池袋駅まで一緒に帰り、改札で別れた。
私は空腹だったので、北千住駅の中にあるいつもの回転寿司へ行った。
生ビール一杯と四皿食べただけなのに倒れそうになった。
激しい睡魔に襲われ、やっとの想いで帰宅した。
家に着いても疲労感は増すばかり。
サクサクと書いて、早めに寝ることとする。
先輩曰く、私って頭が悪いそうだ。
パソコンの配線ができないこと、ノートパソコンを買ったのにクロームブックを買ってしまったこと、それより何より遅刻した時に社長にこう言ったこと。
「社長、白髪染めましたね?」
あまりにも先輩に馬鹿だ、馬鹿だと言われたのでこう言った。
「会社内や常識の観点からすると私は馬鹿だが、違う角度から見た時、決して頭は悪くない」
すると先輩が一瞬ギョロっとした目つきになってまじまじとこう言った。
「まぁね」
違う角度とは一体どういうことだろうか。
私が正真正銘の馬鹿だったら、まず、文章は書けないだろう。
そして、人望がなかったことだろう。
確かに私はオールマイティな頭の良さはない。
しかし、確実に人を抜きん出るものがあると思っている。
ただ、私はこう思うのだ。
小利口な女は可愛げがない。
女は馬鹿なくらいが丁度いい。
ところが先輩に言わせれば、自分でこういうことを言ってしまうところが頭悪いとなるのだろう。
この世には頭脳明晰な女は幾らでもいるが、悪知恵が働く小利口は頂けない。
それよりは、純粋で騙されやすく危なっかしい女の方が魅力的だと私は思う。
そう考えると、私なんて分かり易いほどだ。
男の力を借りないで生きてきたが、多少器用な賢い男が一緒だったらここまで遠回りしないで済んだような気がする。
パソコンの配線ができなかったり、間違えてクロームブックを買ったりしないで済んだように思う。
しかし、不器用で損する生き方に慣れてしまっている。
仮にこのまま一人で生かされる運命だったとしても、それなりにドタバタと不格好に生きて行くことだろう。
それにしても一回り年下の先輩に馬鹿だと言われてもゲラゲラと笑っているのは、本当に馬鹿だからだろうか?
私としては器のデカさと自己肯定感の高さだとしか思えない。
大抵の人は腹を立てたり悔しがったりするのではないだろうか。
私くらいになると、先輩も半分本気、半分からかっているのがわかってしまうのである。
万が一本気で馬鹿だと思っているなら、人間を見る目がないってことだ。
誰よりも馬鹿でありながら、誰よりも馬鹿に徹することができる賢さを持っているのが私。
この馬鹿さ加減は皆を和ませ、安堵感をもたらしていることに、気づいている人は多々いるように思う。
ピースフルであり、視野がグローバルなだけに、手元や身近なことには意識が向かないのかも知れない。
それは馬鹿なのではなく、生きる次元の違いのようにも思う。
足元に落ちている石にはつまずくけれども、空を飛ぶことができるようにね。
真顔で馬鹿扱いしてくる割には楽しそうにしているのを見逃さない。
それくらいのことはお見通しであり、皆が楽しいならよごれキャラになんていくらでもなってやるくらいの気持ちだ。
全くなんてデカい器なんだか。
本当の強者は、ヤジをも味方につけることができるのである。