ノルマ達成できたのに、精神的に不安定だった。
ということは、ノルマに振り回されている訳でもないようだ。
恥ずかしながら、理由は一つである。
先輩を『天下一品』に誘えなかった。
昼休憩に入るタイミングも合わなかったから仕方ないのだが、ヘタレな自分を責めてしまった。
お陰で一日中心臓が痛かった。
心を病んでしまうのって、実はめちゃくちゃ単純な理由なのかも知れない。
てことは、単純なことで治る可能性もあるってことだ。
私は仕事のことを複雑に考えているだけで、実は仕事のことなんて悩んでないのかも知れない。
つまり単なる恋煩いなだけだということだ。
恋が上手く行けば何もかも上手く行くような気もする。
それなのに何者かにびびって積極的になれない。
失うものは一つもないはずなのに、覚悟を決めかねてしまうのは私が臆病だからだ。
会社の中での居場所を失うことが怖いのか、それとも先輩を傷つけてしまうのが怖いのか。
年齢差とかそういうのは言い訳でしかない。
あぁ、ヘタレ女。
先輩は私のことをどう思っているんだろうか。
そんなことわかる訳もない。
むしゃくしゃではない、とにかく切ない気分で心が痛むので、北千住のプロントでスパゲティを食べ濃いめの角ハイボールを飲んだ。
ダイエット中なのにパスタを平らげちゃうのは精神的な不安定さから来るものだろう。
隣では不倫カップルが実に下らない話をしている。
結婚に失敗したという話だ。
嫁に送ったLINEに既読が付かないという話だ。
私はあまりLINEが好きではないので、先輩のLINEすら知らない。
LINEより電話したい!
休みの日、お互いに飲みながらお話したい。
こうやって話しているくらいなら、一緒に飲みに行こうよ!って言われたい。
そういえば、私の精神的な不安定さは色々悪さをしでかしている。
会社の人から嫌われているように感じてしまう。
何故だろう、優しいのは先輩だけで皆は私を避けているような被害妄想。
それを友達に訊いてみたらこう言われた。
「蓮ちゃんのことが皆、怖いんだよ」
この一言で全ては解決した。
モヤモヤがサーッと晴れ、なんだか皆のことが可愛くなった始末。
私ってやはり単純なのである。
皆から怖がられていた元ホストに対し、私はタメ口で堂々と接している。
しかも、慣れない仕事もやって退けているところも皆を怖がらせている要因かも知れない。
そんな中先輩だけが私の目を見て話してくれる。
他の皆は一切目を合わせてくれないのだ。
なんだかよそよそしい。
そのことでちょっとだけ寂しくなっていたのだが、皆から気に入られたい訳ではない。
ただそれなりに私は汚れキャラを演じ、皆を笑わせたりしている。
完全に空回りしているようで、もしかして嫌われているかもなんて思っていた。
まぁ、一回り以上年の離れた若僧達からすると、確かに私は怖いのかも知れない。
やれやれ、私もいちいちビビりだから。
そんなこんなで波乱に満ちた一日を過ごしたが、長電話したことでケロッとした。
こんな時、話し相手になってくれる友達は貴重である。
プロントで食べたパスタを消化するくらい長居して喋り倒して店を出た。
電車は遅い時間だったし、週末ということもあって空いていた。
人間のメカニズムは至って単純かも知れないと再び思った。
一言で言うならば、寂しさは万病の元、災いの元みたいなことだろう。
私が泣ける質なら楽なのかも知れないが、泣くことがまずない。
しかし、この単純さがなければ私は怖いだけの人かも知れない。
皆を何となく安心させるのは、この単純さがあるからかも知れない。
って自分に都合のいいように考えておけばいい。
だとしたら、私の勘では先輩も寂しいのだ。
酒がなければ生きている意味なんて分からないと言っていたから。
私には書くことがあるとは言わなかったが。
似た者同士だったりしてね。