ん〜、やっぱり元ホストがいい、などと思いながらプロントに寄った。
あまり金を使いたくないのだが、一人で家に帰るのが耐えられず、毎晩のように仕方なくプロントへ寄る。
キャンプめちゃくちゃ楽しみだが、私が休みを取ったせいで元ホストは一人勤務。
私が出勤すればデートできたかも知れないのに、キャンプを取ってしまった。
「え?!蓮ちゃん出勤しないの?ダメだよ!」
「ごめん、たまには遊びに行ってくる」
「マジかよ、俺、一人じゃん」
「うん、そうだね」
「マジかよ…」
ごめんなさい、私ってヤツは…。
そう思いながらも、これはある意味でいい駆け引きになると思っていた。
寂しいばかり言っている私が、元ホストを放置して遊びに行く。
うん、うん、心配させるいい機会だ。
あれ?!
蓮ちゃんは俺の言いなりだったと思ったら違うの?みたいな。
違うね!
私はこう見えてクソ真面目な小悪魔である。
何でも言うこと聞くと思わせて、ぷいとソッポを向く。
甘えたい時だけ甘えて、そうじゃない時は無視。
ドMな元ホストにはこれくらいしてもいいと思う。
かえっていいかも知れない。
だからといって、遊ぶ相手が先輩とは、ある意味裏切り行為なのだが。
そそ、社長に言われて思い出したことがある。
タメ口ちゃんも元ホストのことが好きだったよなって。
元ホストはタメ口ちゃんから告白されても返事しなかったようだ。
放置ってか無視していたようだ。
タメ口ちゃんが心折れたのは元ホストのせいだと社長は言う。
ただ、私はピンと来たことがある。
元ホストが皆の前で、私と籍を入れてもいいと言っていたことがある。
「蓮ちゃん、俺が籍入れてやるよ!」
それを私は無視したのだが、背中を向けてニタニタしていた。
それを聞いたタメ口ちゃんって、めちゃくちゃショックだっただろうに。
元ホストは蓮ちゃんのことが好きなんだ!っていう確信に変わっただろう。
それで心折れたのは間違いない。
元ホストもまさか、タメ口ちゃんが辞めるとは思わなかっただろう。
いや、どうでも良かったのかも。
そんな元ホストは社長から厳重注意を受けたそうだ。
「あんまり女に優しくしちゃダメだぞ!」
「あ、俺、根が優しいんで、笑」
ところが厳重注意を受けた元ホストは、私にすこぶる優しくなった。
何なんだこの男は!
何考えているんだか!
やっぱ元ホストなんだな、この男は。気をつけなきゃいけない人なんだな。
でもなぁ〜、やはり一緒にいると安心するんだな。
こればっかりは仕方ない。
恐らく、私がタメ口ちゃん二号になることを危惧しているんだろうよ、社長は。
お前はアイツに惚れるなよ、と言いたいのだろう。
嫌や、モテる男は嫌いじゃ!
だけど、その辺の女どもには負けてない自負もあるのだ。
先輩にくれてやるのも勿体ない気もする。
じゃあキャンプに誘われてもホイホイ着いて行かなきゃいいのに。
キャンプは元旦那と一緒に行って以来。
やっぱ行きたいよね!
本能のままに突っ走っている私は、神に許されるだろうか。
プロントでウダウダしてたら、元ホストから連絡が来た。
隣の会社の社長の悩み相談に乗っているらしい。
めちゃくちゃ面倒くさいけど、隣の会社の社長も大変なんだとか。
恐らく女従業員の悩みだろう。
女って面倒くさいのよ。
私も面倒くさい女だろうが。