またもやノルマ達成ならず。
午前中は調子が良かったのに、午後から一件も取れず。
ガッカリ!
このままじゃいかんと思いながらも思うようにならない。
真っ直ぐ帰れって言われたのに、北千住のプロントに寄った。
シラフでは家に帰れないよ。
洗濯もしなくちゃいけないんだけど、帰りたくないのよ。
私ってクズ!
金もないのに、フラフラ飲み歩くのは、今に始まったことではない。
元ホストのせいにもできない。
己の弱さじゃ!
嫌だなぁ〜。
タコのカルパッチョに、タコがちょっとしか入ってない。
あぁ〜あ、さっきまで会社で一緒だったのに、元ホストに会いたいよ。
情け無い、私がなんでこんなんになっちゃうの?
ずるいよ、ずるい。
お互い様だと思いたい。
プロントは心地が良い。
池袋駅のプロントと違って、煙草が吸える。
私って女の魅力に欠けるのかなぁ〜。
そればかり考えている。
直接本人に訊いてみようかなぁ。
でも返事に困るだろうしね。
魅力ないって言われたら凹むしね。
面倒くさい女だなぁ〜。
そういえば最近ではナンパもされなくなったなぁ〜。
プロントの喫煙所から、駅構内を歩く人を眺めている。
そしたら無性に悲しくなってきて、元ホストに連絡した。
「私って魅力に欠けるのかなぁ〜?」
「そんなことないよ、大丈夫だよ!」
「う〜ん、やっぱり魅力ないのかなぁ〜」
「もっと自分に自信持ちなさい!」
だって!
だから私は負けじと言ったよ!
「アンタのせいよ!」
「なんでよ?」
もう傷つけたくないとか、大事だとか、言わせないよ。
泣きたくなったところで、プロントを出た。
鏡に映る自分を見ては、泣きたい気持ちになった。
結局さ~、じっくり話し合ってしまったよ。
二時間かかったよ。
結論から話すと、私の気持ちには気づけずにいたようだ。
だけど、この話合いでよくわかったようだ。
やっと元ホストは目が覚めたようで、ひたすら謝っていた。
元ホストだったくせにプライベートのことは、極めて鈍感なんだとか。
そして彼はこう言った。
「人を信用するのに時間がかかるタイプなんだよね」
だからせっかちな私は一瞬身を引こうとした。
すると、引き留めに入ってきた。
つまりこういうことだそうだ。
「段階を踏みたい」
は?
私は、人を信用するなんて途方に暮れることだと言った。
ギャンブラーなら一か八かでいいじゃん!と。
他人に裏切られることなんて大したことないと。
ぶっちゃけ、私は滅多に人を信用しないがすぐ騙されるし、すぐ裏切られる。
相手には裏切るつもりはないのは百も承知だが、どちらからともなく離れて行く。
人間なんてそんなものだと思っている。
でもさ、私は元ホストと真剣に付き合おうとしていて、裏切られても困る。
かといって信用できるようになるまで付き合わないなんて、そんな阿呆なことしないよ。
だから私は決断も行動も早いと言った。
元ホストには言わなかったが、諦めも早いということだ。
何年も片想いを貫くっていうのはよっぽどのことで、そういう場合に限って別れも早いものだ。
私はこの話合いによってある種の確信を抱いた。
この男は覚悟を決めるのは時間の問題で、きっと私を迎えに来ると。
そうじゃなきゃ、一瞬引き下がろうとした私を止めないよ。
怖かろう。
人を信用するなんて、滅多にあることじゃない。
でも、己の決断次第なんだよ。
勇気一つ、男気一つ、私は元ホストに言われたように、自分に自信を持つことにした。
いや、誇りだ。
それにしても段階を踏みたいとは意外な発言だ。
今更だが、私は段階を踏める男を重んじる傾向にある。
もっと言うならば、段階を踏めない男と結婚なんてしたくない。
つまり、これで良かったということだ。