「たぶん毎日遅くまで飲み歩いているから件数上がらないんだよ」
それ言われたら何も言えなかった。
もう、寂しいとか言い訳はできないと思った。
「真っ直ぐ帰って、コンビニで買った酒飲んで、一時間でも早く寝てみな?」
そこまで言われたら帰るしかないでしょ。
留目に帰り、もう一度言われた。
「真っ直ぐ帰れよ!」
仕方あるまい。
何度も空腹と疲労から、北千住に寄ることを考えたが、空きっ腹を抱えてコンビニへ行き、無事に帰宅した。
はぁ〜、いつものことながら相変わらず遠いなぁ〜。
半年以上、この距離、よく通ったよな。
あと少しの辛抱だ。
結局、二十四日は一人で不動産屋へ行くことになった。
その代わり、来月の一日は泊まりに来てくれるそうだ。
そして朝一で不動産屋へ行く。
「二日は朝から一緒に行くから、その日契約してこようよ」
まるで一緒に暮らし始める二人のようで、私はちょっぴり嬉しかった。
そして、まずはベッドを買うように言われた。
え?!
それって一緒に寝るためだよね?!
全く私もいい歳なのに、そんなことで舞い上がるなんて。
一日に泊まりに来るとなると、段階を踏むのだろうか?
いや、たぶん前回と同じ結果になるんだろうなぁ。
まぁ、それでもいいや、くらいの気持ちである。
一緒にいられる時間が少しでもあるなら、私は安心するのだ。
今まで何人もの男が私を更生させようとしただろう。
飲みすぎるんじゃない、節約しなさい、煙草止めなさいってね。
だけど見事に誰の言うことも聞かなかった。
だからこの歳になっても一向にまともになれなかった。
だけどこの世のクズを見ていると、お互いに更生が必要じゃね?って思うのさ。
私はもし、万が一、無一文になっても他の男は頼らない。
それと同じように、もし、万が一のことがあっても他の女に金借りるようなことはないように、とは言った。
さらに、私はこんなことを言った。
気持ちさえ見えていれば、何をしていても大丈夫だと。
気持ちが見えていなければ、私はパニックになると。
そしたらこう言っていた。
「言っていることめっちゃわかる。蓮ちゃんをちゃんと理解してあげないとだね」
そう言われて安堵に包まれる私っておかしい?
めちゃくちゃ嬉しかったんですけど。
だから私はこう言った。
「更生したる!だから私を更生して!」
するとこう言われた。
「蓮ちゃんなら大丈夫だよ!俺が更生させる!」
そしてこう付け加えていた。
「お互いに更生できたらいいね」
私はなぜか不思議だけど、この男の言うことなら聴くと思った。
私は元ホストにあーだのこーだの言わない。
でも自己主張はする。
たぶん私は『寂しい』以外のことは言わないだろう。
ただ、寂しがり屋を隠しておけるほど、タフではない。
実は今日は真っ直ぐ帰ってこれたのも、元ホストも真っ直ぐ帰ったからだ。
「俺も帰るから、蓮ちゃんも真っ直ぐ帰りな」
つまり、バラバラでいても気持ちが見えたからだ。
私ってつまり、そういうヤツ。
当て付けではないが、元ホストが遊んでいるのに私が寄り道してはならない理由はないでしょ?
ただ、歳には勝てないことに気づいてしまった。
電車の中でも、帰宅してからも、クタクタだった。
やっぱりさ、一緒に住んだ方がいくね?
そしたらお互いに金を使わなくなるよ。
お互いに真っ直ぐ帰ってくるようになるよ。
大家さんの審査が極めて緩い物件を探し、元ホストを引き摺り込もうかな。
今のアパートを解約させて、強制的に私の家に住むしかないように追い込んでやろうかな。
ヤクザが金返せって来たら、私なら頭下げてやる覚悟はある。
神よ、私を試すね~。
まだ苦労させたいのか?
神の指令だと思えて仕方がないのだが。