仕事を終えて、元ホストともんじゃ焼きを食べに行ってきた。
色々話して、三杯ずつ飲んで、我が家に帰ってきた。
元ホストは必死になってテレビ台を組み立ててくれた。
結果としては何もなかったのだが、翌朝起きて銀座に行って、誕生日プレゼントにGUCCIの財布を買ってくれた。
元ホストは金もないし、誕生日のことも忘れているようだったから諦めていたので、めちゃくちゃ嬉しかった。
財布が変われば人生が変わるそうだ。
元ホストもかなり奮発して、自分の財布も買い替えていた。
もんじゃ焼き屋ではこんなことを言っていた。
「俺は一人では生きていけないから一生世話してくれよ」
「私は死ぬのが怖くないのよね、だけど守るべき人ができてしまったから簡単には死ねない」
「俺はこう見えて死ぬのが怖いよ」
「ただ死ぬだけだよ」
「だって消えちゃうんだぜ?」
「たかが死ぬくらい大したことないよ」
そうか、元ホストは私と結婚したいのね。
私達は付き合うのを通り越して、結婚を約束しているようなもの。
私の金は元ホストのもの、元ホストの金は私のもの。
そして、二人は運命共同体なのだ。
キスしたり抱き合ったりも必要だけど、その前に、なんだかもっと揺るぎないものがある。
私はこう見えてあまり人を信頼していないところがある。
ごく一定の限られた人のことしか信頼していない。
だけど、元ホストのことは微塵も疑っていない。
つまり、相性がいいのだろう。
そうとしか思えない。
告白はいつにしようと考えているのだろうか。
元ホストの中に迷いがあるとはもはや思えない。
ただ、ただ、タイミングを狙っているようにしか思えない。
私というヤツは、好きな男が隣に眠っているというのに爆睡だった。
ドキドキして眠れないの、くらい言えば良かったかも。
銀座を歩き回って、飯も食わず解散した。
元ホストは隣の会社の社長が誕生日だからと言っていた。
仕事の話もあるそうだ。
落ち着いたら連絡するね、と言って池袋駅の人混みの中に消えて行った。
私は元ホストを見送るがてら池袋まで来たので、プロントに寄った。
そしてパスタとビールを頼んだ。
飯も食わせないでごめんとだけは言っていた。
ルイヴィトン、GUCCI、セリーヌ、とにかく歩き回ってクタクタだ。
俺の贅沢はもう終わり、などと言っていた。
私は帰宅して、財布の中身をGUCCIの財布に入れ替えた。
人生変わって欲しいなぁ。
そうそう、私の部屋に来て、散らかっているから片付けろと言っていた。
私からしたらどこが散らかっているのかわからなかった。
百均でカゴとかケースを買えと言われた。
あぁわからない。
私ん家のどこが散らかっているのか。