結局、元ホストが欲しかったサングラスが手に入らなくて、居酒屋で飯を食って飲んで、解散した。
眼鏡屋は五軒ハシゴした。
それでも取り扱いがなかった。
入れ墨の施術後だったのもあり、日頃の疲れもあり、元ホストはあまり飲まなかった。
上野駅で解散して自宅に直帰したようだ。
私は赤羽駅近くの病院へ行くため、赤羽へ行った。
カーディガンでは寒く、ダウンジャケットではまだ早いこの時期に最適なロングコートを買った。
グレーのロングコートだ。
ウール素材のカーディガンタイプのコート。
日頃からロングスカートを着ることが多い私にとって、マッチした組み合わせだ。
入れ墨は来月の十八日に予約した。
元ホストと一緒に行ってくる。
最初は戸惑っていたが、腹が決まると楽しみである。
楽しみだね、と言いながら、居酒屋で馬刺しを食べていた。
「私、他の誰ともLINEしてないって言ってたでしょう?」
「なんで?」
「この人と決めた人がいたら、その人だけでいいんだよね」
「それ、めっちゃいいやん。わかりやすい」
「昔から友達が少ないのはそういうこと」
今は元ホストがいて元ホストに信頼してもらいたいのだから、元ホスト一人に絞る必要がある。
「自分から信じて、それが相手に伝わったら、相手も信じたいと思うよな」
いやいや、それって私のことやん。
何もしてくれない元ホストだと思っていたが、私と一緒に蓮の花の入れ墨を入れてくれるなら、それはもう信頼の証。
これだけ入れ墨をいれることを渋っていた私だが、信頼の証を示そうと思ったのだ。
だから、元ホストに言われて、貴方が言うなら、と承諾した。
元ホストの言うことに間違いはないと思っているからだ。
仮に間違えたってどうってことない。
私はそういう考え方だ。
死んだとしたって、悲しむ人がチラホラいるくらい。
困るのは元ホストくらいなものだろう。
長くない人生。
チバユウスケだって逝ってしまった。
未だに信じられない。
でも、現実なんだよな。
休み明けの売り上げは74,200円!
ギリギリノルマを達成。
辛うじて、バイトの人達よりはいい数字が出せた。
社長からも、元ホストからも、こっぴどく言われている。
社員はバイトには負けてはならぬと。
できる姿を見せて、着いてきてもらえるようにしなければならないと。
厳しいことを散々言われた。
これから先、潰れるとね。
悔しかったから、再販を二件取った。
それでも言い足りないような顔をしながら、元ホストはラーメンに誘ってくれた。
仕事の話は一切しなかったが。
元ホストが口を酸っぱくして『潰れるぞ』って言うのなら、多分、このままでは潰れるのだろう。
とにかく顧客作りをして、再販獲得して、見返してやらなきゃだ。
時にムカつく上司であり、怖い上司でもあり、憎めない上司でもあるのだ。
私の奮闘は続く。