三月に入って、新人が入ってきた。
明らかに歳下ではあるが、追い抜かれないよう今まで以上に頑張らなければならない。
月が変わって、なんとなく呼吸がしやすくはなったが、相変わらずのプレッシャーと闘っている。
しかし、あと一日働けば休みで、元ホストと入れ墨を入れに行く。
楽しみでしかない。
二人とも彫ってもらうので、夜遅くまでかかる。
そのあと二人でご飯を食べに行くのだが、食べ終わったら元ホストは隣の会社の社長に会いに行くそうだ。
その代わり、翌日は二人とも休みを取っている。
私はここぞとばかりにゆっくりさせてもらう予定だ。
私と元ホストのバイトは八日からスタートできそうだ。
そのための準備が元ホストにはあるようで、それで隣の会社の社長に会いに行くとのこと。
それ以外にも、ウチの会社の社長と飲みに行ったり、打ち合わせしたり、めちゃくちゃ忙しそう。
そんな中でもとんでもない数字を叩き出しているから凄い。
マジで尊敬に値する。
私のノルマ七万円がちっぽけに感じる。
私にとっては高いハードルなのだが。
それでも戦い方が少しずつ身についてきている。
どうやって押して、どうやって納得してもらうか、その方法が見えてきた。
もう一踏ん張りなんだよな。
それにしても疲れたよ。
近所の中華屋で麻婆豆腐を食べた。
元ホストは社長と飲みに行ったので、直帰する必要がなかったからだ。
いつもより二十分ほど遅くなって帰宅した。
中華屋では趣味の悪いBGMが流れていて、店に入ったことを少々後悔した。
カウンターに座ってレモンサワーを飲み、麻婆豆腐を食べたらすぐに出できた。
飲み足りないのでスーパーで缶チューハイを買おうか迷ったが、何も買わずに帰宅。
暖房を付けなくても過ごせるくらいだ。
社長と飲みに行ったので、LINEの返信はない。
元ホストの帰りを待つか、このまま寝てしまうか迷っているところだ。
元ホストなら、私が飲みに行ったら待ってくれているはずだ。
しかし、翌日も仕事。
元ホストは先日、皆を指導した後、こんなことを言った。
「でも俺は女心はわからない」
そこがいいところだと皆は口々に言った。
しかし、どうやら自分のことをわかっているようだ。
「俺がわがままだからわからないんだろう」
その通りだと私は思った。
ただ、女心はわからなくていいと思う。
人として、自分がされたら嫌なことを相手にしなければいい。
私はそれを常に自分に言い聞かせている。
まぁ、それすらもわからないところが、確かに元ホストの良いところでもあるのだが。