橋岡蓮 ’s diary

単なる日記でもなければ、単なるエッセイでもない

土砂降りの中働いていた頃

土砂降りの中、家から一歩も出ることなく仕事ができることがこの上なく幸せに思う。

スカイプに依る打ち合わせも済み、かなり戦闘モードなのだが、これを書いてしまわなければ一日の幕は閉じれない。

打ち合わせでは本のサイズから表紙のイメージ、中身の構成についてまで幅広い話し合いができた。

結論としては、ジャンジャン書いて、ジャンジャン校正して行こうということになった。

先ずは一本の短編を今月中に仕上げることにした。

発売は十月。

タイトルが『ロックンローラー』~絶望の先にある希望~なので、読書好きな人のみならず、音楽好きな人も楽しめるような内容にしたいと思っている。

トラブルもなく、実に良い打ち合わせができた。

時間的には大体一時間半程だった。

それにしてもよく一時間半煙草を吸わずにいられたよなと自分に感心した。

終わったと同時に一服していたら友人からナイスタイミングで電話が鳴った。

打ち合わせ中はセーターを着ていたので暑かったが、終わった瞬間肌寒さを感じたのでエアコンを付けた。

外は雨と風の悪天候だった。

ぐちゃぐちゃの天気の中、家で仕事をすると不思議と安堵に浸ることができる。

ブルーカラーガールだった時代は、天候などは関係なく嵐の中でも誘導棒を振っていたこともあった。

あれは流石に惨めだったけど、確実に一日七千円はゲットできた。

そこから家賃の分を避けて、余った金でビールや摘みを買って帰ることがとてつもなく幸せだった。

熱いシャワーを浴びて、凍えた身体を温めて、冷たいビールを飲む。

ボロボロのアパートだったけど、雨風凌げる場所に戻ってこられたことの安堵感は半端なかった。

今の私は、多くの不安と不満を抱えてはいるものの、こういう土砂降りの日は「家」があることに感謝したくなる。

そして誰からも文句を言われることなく白紙に向かう時間が作れることもまた、ありがたいと思ってしまうのだ。

たまにブルーカラーガールに戻りたいと思うこともある。

しかし、それは何時からでも始められることなので、やはり今しかできないであろうことを選択する。

歳を重ねてからのブルーカラー仕事はしんどいだろうが、雨に打たれた分強くなれるような気がする。

あの頃はまだ若かったし、なんぼでも他の仕事があったのに何故ブルーカラーガールを選んだのかと云うと、日本の首都で最低賃金で働いて生活できれば無敵だと思っていたからだ。

若いうちにそれを体験してしまったので、何かあったらまたあの頃に戻ればいいだけと自分を励ますことができる。

 

今の私の仕事は途方に暮れるような仕事だ。

膨大な時間を使って作品を作り、受け入れてもらえるのかどうかもわからないのに全力を注ぐ。

頼りになるのは、直観と自分を信じる力だけだ。

ハッキリ言って、毎日ぐちゃぐちゃの天気の中で誘導棒を振っていた方が生活は安定する。

もしかしたら、吸いたい煙草も吸えないのだから健康体になれるかも知れない。

仲間ができて遣り甲斐さえ生まれるかも知れない。

それでもだ。

 

私は煙草が買えなくなってもこの道を降りることはしないだろう。

ポジティブな私は、いつか四百円のワインではなく六百円のワインが毎日買える生活が来るだろうと信じている。

四十一歳にもなって無謀な挑戦を続けていることは十分に分かっているのだが、この仕事が好きで好きで仕方がない。

私は誘導棒を振るために生まれてきたとは思いたくない。

闘った末、誘導棒を振る人生を歩むことにしてもだ。

諦めるにはまだ二十年早い。

土砂降りの中、家があることに感謝できるようであれば、なんとかこれからもこの生活を続けて行くことができるはずだ。

何故感謝できるかって、それは強烈な太陽の下でも嵐の中でも誘導棒を振ったという経験があるからとしか言いようがない。

自分を支えてくれるのは絶望的だと感じる経験でしかない。

そこから何かを学び、次に活かすことができるのではないだろうか。

 

 

破壊から再生へ

破壊から再生へ

  • 作者:橋岡 蓮
  • 発売日: 2020/12/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)