これ、どうしても書きたかったこと。
「バイト、めっちゃ楽しかったんですけど~!」
最近、ちょっと落ち込んでいたのだが、こうして働きながら生きるのも悪くないと思えたので職場の方々に感謝している。
私が店長に連れて行かれたのはパン屋さん。
中には女性が二人いて、とても優しくて感じの良い方々だった。
トロイ私のことを上手い具合にフォローしてくださった。
初日なので終業時間までとても長く感じたが、終わった後二分で自宅に帰れることが何より嬉しかった。
制服に着替えて帽子を被り、一切のアクセサリーは外すように言われた。
確かに食品を扱う仕事でアクセサリーはNGだ。
ビニール袋を貰ったので、その中にピアスや指輪、ブレスレットを入れてポケットにしまった。
仕事内容は、多種多様で覚えることが沢山あった。
でも私がいっぱいいっぱいにならないように少しずつ丁寧に教えてくださった。
このスーパーは近所なのでよく煙草を買いに行くが、パンは好きじゃないのでパン屋さんのパンを一度も買ったことがない。
しかし、一から丁寧に作り上げられるパンを見ていると、なんだか感動してしまった。
スーパーのパン屋さんって業者から取り寄せているものかと思っていた。
でもちゃんと作っていたんだと思うと、今までスルーしてきて申し訳なかったなという気がした。
たった二人で忙しかっただろう。
パン生地をこねて、焼いて、品出しまで二人でやっていたそうだ。
他は七十代の方が二名と二十三歳の男の子がいるそうだが、私はいい戦力になれるような気がして少し嬉しくなった。
早く仕事を覚えて貢献できるようになりたいな、そう思った。
私は初日なので主に売り場への品出しを担当した。
手先が不器用なので、袋詰めなど苦戦したが、なんとか就業時間内に終わることができた。
ロッカーで着替えていたら、年配の従業員に話しかけられた。
「アンタ、どこの部署なの?」
「パン屋さんです」
「あらま、それは良かったじゃない。あそこの人達は皆親切でいい人でしょう。良かったわね!」
「そうなんですよ、とても良くして頂きました。ありがとうございます」
やった!私は当たりくじを引いたんだ!!!
運とタイミングが良かったんだ!!
たった二分の帰り道、なんとなく心が軽やかになっていることに気が付いた。
高い時給を求めて、遠くまで通おうとしていた自分が愚かに感じた。
給料は安いけれど、やっぱ最終的には何をするかより「誰と」するかなんだよなぁ。
まだ初日なのでぬか喜びはできないが、安心した。
あとは皆の名前や仕事を覚えて、マイペースに少しずつ溶け込んで行けばいい。
慣れてくれば手早く作業ができるようになるかも知れない。
それにしても、たった二人で回すパン屋さんはとても健気に映った。
パンが好きだったら、一日一つくらい買うんだけどなぁ。
品出しをしている時、売れている商品があったので嬉しかった。
私が袋詰めしたポテトフライは、早い時間から半分以上売れていて、心の中でガッツポーズをしたものだ。
一ヶ月以上に及ぶ職探しの結末が、まさかパン屋さんになるとは思ってもみなかった。
シフトの話をしている時に、こう言われた。
「下のお名前は?」
「ハスと書いて『蓮』と申します」
「あら、蓮さんって云うの」
下の名前の方がインパクトが強いらしく、下の名前で呼ばれることの方が圧倒的に多い。
きっとその女性従業員は私の下の名前を覚えてくれたことだろう。
週四日と云うのも、ちょうどいいペースだ。
本当はもっと稼ぎたかったけれど、このパン屋さんで頑張ろうと思うことができた。
「いらっしゃいませ~」
そう言うのも懐かしさと新鮮さが入り混じってワクワクした。
パンが焼き上がって、店頭に並ぶのを待っているお客様もいるようだ。
接客の仕方についても指導してもらった。
楽しいことばかりじゃないと思うけれども、私のペースでやって行こう。
やっぱ、労働って美しい。