nakanakadekinai's diary

単なる日記でもなければ、単なるエッセイでもない

一歩家を出るとドラマ

皮膚科へ行くために外出した。

一時間早く家を出てバスに乗り、最寄りの草加駅前の寿司屋へ立ち寄った。

気晴らしになるかと思って、ちゃっかりビールも飲んできた。

八貫で六百円は安くて魅力なのだが、最近胃が大きくなったのか物足りなかった。

しかし、ここで食べ過ぎたら夕飯に響くし後悔すると思ったので、物足りないまま皮膚科へ行った。

皮膚科では大人ニキビの薬を処方してもらうだけ。

だから窓口受付といって、保険証と診察券を出せば、薬局で薬がもらえるようになっている。

待ち時間はほとんどない。

それでもやはり身支度をして家を出てバスに揺られて皮膚科まで行くのは一仕事なのである。

帰宅したら案の定、十六時近かった。

それから急いでこの文章を書いている。

何故なら早く寝たいからだ。

酒を飲みながら書く体力が残っているような気がしないからだ。

もっと言うならば、酒を飲む時くらい、ゆっくり飲みたいからだ。

 

 

皮膚科の後、どうしても煙草が吸いたくてドトールに入った。

すると、喫煙ルームでの飲食が可能になっていた。

その代わり、「滞在時間三十分まで」となっていた。

そこで迷った。

ドトールでこれを書いてしまっても良かったのだが、三十分では書き終わらない。

ましてや、隣にいるおじ様達の声が大きくて集中できそうになかった。

だから煙草を二本吸っただけで出てきてバスに乗った。

バスから降りて、トボトボ歩いていたら近所の小母さんに捕まってしまった。

 

「こんにちは!お久しぶりです!」

 

私は元気よく挨拶をした。

 

「あら、久し振りじゃない。近所にいてもなかなか会わないわね。バスで帰ってきたの?」

「はい、十五分のバスで」

「私はその前のバスだったわ。仕事?」

 

皮膚科などと言うと話が長くなるので、仕事ということにしておいてその場を去ろうとした。

 

「また声かけてね!」

 

小母さんはもっともっと話をしていたいような様子だったが、寒かったし立ち止まってしまえばなかなか帰れないということを知っているので頭を下げて失礼した。

 

「ありがとうございます!お疲れさまです」

 

そう言って大きく手を振って玄関に入った。

実はなかなか行けない銀行のアプリを取得すれば、明細が見られることに気付き、その手続きをバスの中でしていたのだ。

さっさとその手続きを済ませてしまいたかったというのもある。

決して小母さんのことが嫌いなわけではない。

アプリを取得し明細を覗いてみると、十月、十一月と多少使い過ぎたが、それでもまだ残っていることがわかった。

このまま貯蓄し続ければ、家を出て行くだけの金にはなる。

しかし、私の近しい人からは離婚はもう少し待った方がいいとも言われている。

私は寂しがり屋で、一人暮らしに耐えられそうにないとのことだ。

 

 

そういう意見もわからないこともないので、改めて考えてはみるが、たぶん結果は同じだろうな。

私も旦那もお互いに我慢し合っているのがわかるからだ。

旦那を早く解放してあげたいという気持ちもある。

自分のことだけ考えればもう少しここにいた方が得なのだが、気持ちがなくなってしまった人の世話になっているのも罪悪感がある。

そう考えながら日々を過ごしているので、ご近所の小母さん達ともあと何回顔を合わせるだろうかと思ってしまう。

きっと我が家の前にトラックを横付けしてあるのを誰かに見られて、あの奥さん出て行くのね、みたいなウワサがたちまち広がるのだろう。

そんな光景は目に浮かぶようだ。
大して仲良い小母さんではないけれど、高齢化したこの辺りでは、私はちょっとした人気者。

お互いに世話をしたわけではないが、声を掛け合うことが何よりの恩だと思っているのでちょっとセンチメンタルにもなる。

あぁ、お別れするんだなぁってね。

一歩外を出たらドラマが生まれるってこういうことかも。

ただ、皮膚科へ行っただけなのだが。