橋岡蓮 ’s diary

単なる日記でもなければ、単なるエッセイでもない

寂しさをぶった斬る

総合病院の受付は様々な人でごった返していた。

非常に忙しそうだ。

それでも嫌な顔一つしない女性受付担当者がいて、少々救われる想いだった。

労災の書類を提出しに行ったのだが、私はそれを上手く説明できなかった。

すると、最初に受付をした女性はぶっきらぼうにこう言った。

 

「窓口が違います」

 

だったら教えてくれよ。

受付が広すぎてどこへ行けばいいのかわからなかったのだ。

 

「どこの受付へ行けばいいのですか?」

「二番窓口です」

 

目も合わせてくれなかった。

やれやれ、仕方がないから二番窓口へ行ってみるとすこぶる良い対応をしてくれたと云うわけだ。

病院とはいえ接客業だ。

やはり、患者さんに不快な思いをさせてはならぬ。

感心と落胆の入り混じった気持ちで、整骨院へ。

病院のはしごをしたらクタクタに疲れて、二時間ほど横になっていた。

どうやら浅い眠りに就いたようで、夢を見た。

 

「スタッフや利用者さんを心配させたまま消えるのか?」

 

誰かからそう言われてハッとして起き上がった。

やはり疲れているのだろう。

悪夢を見るなんて。

またバリバリ働ける身体になるのだろうか。

書くことに専念するにしても、体力勝負だから身体は治さなきゃ。

休職中の身なので、目に映る労働者が眩しく見える。

バスの中から見えた工事現場でタバコをふかす人々の笑顔が私の胸に突き刺さった。

もしかしたら、私は今後、たった一人で仕事をするようになるかも知れない。

そう考えると、スタッフ同士の揉め事すら懐かしく思える。

しかし、ケジメが必要な気がしている。

自分に自分でケジメを付けるのだ。

そうすることで、逃げ道を潰すことが大切なのではないか。

少なくとも私みたいな横着者は、追い込まれないとエンジンがかからない。

危機感がなければ動けない。

だから私はなるべく崖っぷちを歩くようにしている。

そうすることで、自分に拍車をかける。

 

 

何かを掴みに行くと云うことは、何かを捨てることでもある。

勿論、皆の笑顔を置き去りに、一人で一歩を踏み出すことは勇気が要る。

残酷だとさえ思ってしまう。

しかし、これから戦いに出て行く勇者は泣きながらでも一人になる必要がある。

勝負に勝たなければならないからだ。

現実的なことは度外視しなければならない。

それが正真正銘の真剣勝負と云うものではないだろうか。

楽しかった思い出を捨てること。

辛い。

辛いが私はそうすることで人生を変えてきた。

これから嵐のような日々が待っている。

だったらケジメを付けるべきだよな。

 

 

さて、行くしかないよな。

ここまで来たら。

波に乗るしかない。

私に向かって追い風が吹いているのがよくわかる。

それでもやはり、職場の皆の笑顔を置き去りにすることは私の心を抉る。

センチメンタルな気持ちと疲労でどうしていいかわからなくなった。

ふと、頭をよぎったことがある。

あ、私は寂しいんだなってね。

自分で認めてあげなければならない。

それでも寂しさをぶった斬る理由もちゃんと自分に教えてあげなければならない。

何故かと云えば、歩き続けたその先にはもっともっとスペシャルな笑顔が待っているからだ。

もっと言うならば、世界中の読者が私を待っている。

感動を待っている。

私に何ができるかと考えた時、それは世の中捨てたものではないと思ってもらうことなのだと思う。

そっか、薄汚れたこの世の中に蓮さんみたいな人もいるんだと。

泥水をぶっかけても塗れることのない人もいるんだと。

蓮の花は蓮の花であることを証明するためにも、行かねばならぬ。

結果として職場の皆の笑顔を置き去りにすることになったとしても。

私には使命がある。

まるで武士のようだが、武士なのだ。

そう考えると、武士もきっと本当は寂しかったりしたのだろう。

私のようにね。