ドコモの面接が決まらず、休日のスケジュールを埋められないことが無性に嫌になって、ドコモの案件は最初から無かったことにして欲しいと会社に伝えた。
そして、来月からもコールセンター継続でお願いできないかと訊いた。
そんなことから、私のコールセンター継続は決まった。
もう振り回されるのは嫌だからだ。
何となく、新しい職場へ行くのも嫌だった。
また一から新しいことを覚えるのもしんどかった。
つまり、私は楽な方へ逃げたのである。
最も嫌うことではあるが、安堵している自分がいる。
確かに対面販売は捨てがたいが、慣れた職場を手放すのはかなり勇気の要ること。
もう若くはないし、せっかく身体が慣れてきたので、やはり勿体ないと思ったのだ。
給料は高くないが、生活はして行ける。
高望みをしなければ、多少は美容に金をかけることもできる。
これでいいやと思った。
その背景には、この私が人間関係上手く行っているというのもある。
今までは、こういうことができなかった。
社会が変わるはずもない、きっと私が変わったのだと思う。
若かりし頃の私は上司という上司を睨み回していた。
長いものには巻かれない精神と、部下を守るという正義感を振りかざしていた。
それが正しいと思っていた。
ところが、部下の方が賢かった。
皆は私を裏切らないような形で、上司を味方に付けていた。
気づいたら、私は頼もしい上司でも何でもなく、ただ自我が強い一匹狼だった。
出る杭は打たれ、コテンパンに叩かれた。
出すぎたら打たれないと信じ、倒れるまで働き、本当に倒れた経験がある。
そうして、働く場所を転々としたし、どこへ行っても同じようなことを繰り返した。
結局、この歳になっても、一切出世できず、下っ端続きで今に至る。
私には上司になる素質はないのか?と考える。
経営者や上司を見ては、私だったらこうするのにって腹を立てていた頃が懐かしい。
今となっては、下っ端がある意味楽だったりもする。
成績上げるだけじゃんね?
上司は部下のことを考えて、大変そうだ。
とはいえ、この歳になって未だに下っ端しか知らないことは、恥でもあるような。
個人事業主として成功しているわけでもない。
触れていないだけで、情けないような気もする。
ところで、元ホストの実家が私ん家の近所なんだって!
埼玉県出身だそうだ。
偶然すぎるのか、縁があるのか。
ちょこちょこ実家に帰っているそうだ。
徒歩三分の距離。
いつか我が家の近所で一緒に飲むことはあるのだろうか。
立ち飲み屋や、中華屋や、焼き鳥屋で。
まだ現実を受け止めきれず、ぼんやりと考えているが、この奇跡は凄いこと。
まぁ、元ホストがいなかったら、ドコモにこだわって、転職しようとしていたかも。
高い給料と、得意の対面販売を求めて。
だけど、何もかも面倒くさくなったのは、元ホストの実家が谷塚町だと知ったからかも知れない。
来月飲みに連れて行ってくれると言っていたし、このままお別れしたくないという願いだろう。
それは、わかりきっている。
しかし、私は褒められたら伸びる人間だが、褒められるくらい成績を上げなければこの職場での存在価値はないのである。
低迷すれば、人間的な価値さえ見失う世界である。
最近の私は大苦戦。
自分の『商品価値』がわからなくなっている。
だから立ち飲み屋に寄ったのである。
谷塚駅前の立ち飲み屋。
コンビニに寄ったが、食べたいものが何もなかった。
だから、隣の立ち飲み屋に入った。
サバの味噌煮が食べたかったのだが、なくて、サバの塩焼きと小松菜キムチを頼んだ。
実にヘルシーだ。
立ち飲み屋に寄って、何かが解決するわけでもない。
ただ一時の欲望を埋めるだけなのに。