nakanakadekinai's diary

単なる日記でもなければ、単なるエッセイでもない

あぁ、寂しいんだよ

幸い雨には降られなかった。

予報では昼過ぎから大雨だったのに、夜まで天気が崩れなかったのは奇跡に近い。

と云うのも、美容室へ行っていた。

ストレートパーマにカラーリングをしてきた。

長時間に及んだので、当然ありとあらゆる話をした。

コールセンターの話、間違った薬のせいで抑うつ状態だった話、酒の話、コロナの話、そして北千住の話などだ。

完全予約制の店なので他に客はいない。

 

「池袋で働きながらも今住んでいるところが住み心地良いわけですよ」

「北千住も近いですしね」

「そうそう、やっぱ私は北千住が好きですね」

 

美容室は埼玉県の川口市にある。

私は以前川口市に住んでいた。

だからかれこれ五年ほど通っていることになる。

恐らく美容師さんは私より少し年上なはずだ。

奥さまが私と同じくらいの年齢。

高校生の子供がいるからもしかしたら私より上かも知れない。

私も高校生くらいの子供がいてもおかしくない年齢だが、私自身はまだまだガキ臭さが残っている。

母親になることを知らずにこの歳まで来たので、一生ガキ臭いままでいることと思う。

美容室が終わって、ハッピーアワーに逃げ込む辺り、成長の兆しがない。

しかし、私はコールセンターで働き始めてから酔っ払うということから卒業した。

次の日のパフォーマンスのことを考えると酔ってはいられない。

毎日毎朝ベストコンディションでいたいのだ。

かといって酒は止められない。

居酒屋街の看板を見ながらどの店に入るか迷っている時間は貴重である。

散々悩んだ挙句、私が選んだのはファミレスの『ガスト』だ。

お通しが無いのと、まだハッピーアワーの時間帯だったのと、肉料理が美味いからだ。

若鶏のグリル焼きと、ミートスパゲティハーフを頼んだ。

勿論角ハイボールは濃いめにした。

煙草が吸えないので長居はできず、なんと一杯のみで切り上げた。

帰宅してからこれを書かなければならなかったからだ。

何度も言うが、仕事と書くことであらゆるものがセーブされている。

朝から飲むこともなくなったし、二日酔いになることもない。

休日の次の日はボーっとするので、寝る時間も調整している。

休日だからといって早く寝るようなことはせず、いつも通り寝ていつも通り起きる。

命懸けで仕事をしている。

自宅はエネルギーチャージするための場所。

会社で周りの話を聴いていると、休日は焼酎のペットボトルを空にしてしまうほど飲むそうだ。

しかし、若いから無茶ができるのである。

私くらいになると、ビビッて日本酒に手を出すのもためらうほどだ。

それなのに職場の友と飲みに行きたいのは、酒が飲みたいからじゃない。

仲良くなりたいだけなのだ。

ところが、そうでもない人から誘われても困るわけで。

やはり、飲みに行きたい人は限られる。

誰からも誘われないと云うことを美容師さんに話してみた。

具体的に説明するとこう言っていた。

 

「たぶん誘われることはないですねぇ」

「え?マジすか!!!」

 

密かに絶大なるショックを受けた私。

職場の人と仲良くなりたいと思う時点で、散々人間関係に苦労してきた大人とも思えない。

高校生だった頃、ホステスをしながら焼肉屋でバイトしていたことを思い出した。

結論から話すと、誰からも誘われなかった。

私抜きで皆は飲み会を開催していたのを知って、ショックだったことがある。

単純に仲間外れにされたか、よその人だと思われたか、住む世界が違ったか。

未成年はそういうことに敏感だが、私は四十過ぎて未だに敏感である。

職場の先輩とこんな話をした。

 

「お客さんが何度も海産物を買ってしまう理由が私にはわかります」

「あぁ、寂しいんだよ」

「話しかけて欲しいんですよね、誰かに」

 

だが、私もそうです、とは言わなかった。

なんとなくシャクだと思ったから。