帰らなければならないと思うと、疲労感が一気に襲ってきた。
湿気と混じり合って、寂しさが込み上げる。
なぜならとても楽しかったからだ。
いつまでもここにいたいと思った。
だが、私を待っているのは、池袋だ。
正月休みに入ったらまた来るねと言って手を振った。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
沈黙すら心地よいと思えたのは久々のこと。
お土産に持って行った時鮭も美味しかった。
庭で七輪で焼いてもらって食べた。
ちょっと日焼けをしてしまったので、帰ったらパックしなくちゃ。
帰ったら帰ったで、やることが山積みである。
海産物販売の仕事より大切なことが多々ある。
それは打ち合わせと資料作りなどだ。
『蓮'sスクール』の設立に向けて準備しなくてはならない。
小田原の友達の彼はこう言っていた。
「蓮さんが海産物販売をしているなんて世の中間違っている」
もっと優雅に生活していていいとのことだった。
今回は『蓮'sスクール』の話はあまりしなかった。
ただ、諸々仕事以外にやるべきことが沢山あるという話はした。
話をしていると、きっとこの二人なら理解してくれるだろうとは思った。
なぜ、海産物販売などやっているのか?と訊かれてこう答えた。
「自分に足りないものを補い、苦手分野を潰して、自分を売れるようになるための過程なんだよね」
「俺らにはない精神力だな」
そう、私はあらゆる人から去り、あらゆる人を遠ざけ、また、あらゆる人が私から去って行った。
だけど、残る人は残るし、出会う人には出会える。
ただ、自分が進化し続けている感覚だけがある。
皆に着いてきて欲しいなどとは思っていない。
かといって着いてきてくれた人のことは大事にする。
それだけのことである。
新幹線は心地よい。
このまま谷塚まで私を連れて行ってくれたらどんなに楽かと思う。
しかし、品川駅で乗り換えなければならない。
また満員電車に揺られるのかと考えたらゾッとする。
「蓮さんの生活は疲れるよ」
二人もそう言ってくれた。
かなり気を張っていないと確かに乗り越えられない。
今月は何がなんでも数字を出さなきゃならないし、皆の足を引っ張るわけにもいかない。
責任感だけで仕事をしているのかも知れない。
しかし、それだけではなかろうに。
将来に繋がる仕事だから踏ん張れるわけで。
その将来をたぐり寄せるためには、やるべきことをやるだけなのだ。
海産物販売は年末に向けて忙しくなるだろう。
ただ、海産物販売ばかりやっていても良い年は越せない。
晴れ晴れとした気持ちでまた小田原へ行くためにも、走らなきゃならない。
でもさ、小田原からの帰りの電車の中で仕事のことを考えるのは勿体無い気がする。
思い出に浸りたい気もするが、新幹線を降りてJRに乗った瞬間、現実に戻ってきた気がした。
満員電車の中の酒臭さ。
あぁ、帰ってきたんだと思った。
これは心を鬼にして働くしかない。
何のため?
理解されないかも知れないが、全ては未来のため。
もっと言うなら未来の旦那との生活のため。
そのために自己実現が必要で、集大成を行うことが重要なのである。
そうじゃないと仮に出会っていたとしてもすれ違ってしまうのだ。
そうならないようにするためにも、私は燃える。
まずは行かねばならぬ。
いざ、戦場へ。