人に奢るって気持ちがいいものだ。
私はどんなに金がなくても気前がいいタイプである。
ましてや自分のストレス発散に付き合ってもらえば、奢って当然だとも思う。
こういうことを我慢せずできる相手は誰だと考えた時、そうそういないことにも気づく。
だから奢らせてくれた人には感謝しなきゃなとも思うわけで。
かといって、男性にはいきなり奢ったりなどしてはならないという教育を受けている。
大事な話が決まってから色気を見せないとナメられるそうだ。
私って簡単に色気を見せているわけではないけれど、簡単にオッケーサインは出しているかも知れないと思った。
私ってヤツは馬鹿正直すぎるところがある。
というか、黙っていられないのである。
喜怒哀楽を心に留めて、平然を装うことが大の苦手なのだ。
かといって八つ当たりはしない。
ただ、良くも悪くも態度に出たり、ここに書いてしまったりする。
悪気は更々ないのだが、大人ではないよな、なんて思ってしまう。
では、大人とは一体何なんだろう。
ポーカーフェイスが大人なのか?
こう見えて人の気持ちは考えすぎるくらい考えている。
しかし、心の中身をそのまんまオープンにしてしまう時もある。
私は会社で臨時収入が入ったことを皆に言ってしまった。
「マジで?蓮ちゃん奢ってよ!」
どいつもこいつも人の臨時収入をなんだと思ってるんだ。
しかし、そんな大事なことは隠しておけばいいのに言ってしまう私が悪い。
「んで?幾ら?何で臨時収入入ったの?」
「いや、あの、その、労災」
「労災なら三十万円くらい入ったんでしょ?」
「それは内緒だね」
ところが私ってヤツは奢ることに快感を覚えているようなヤツで、金がなくてもあるフリこくタイプで。
誰かに奢った後というのは、どこかスカッとしているものだ。
とりあえずは身近な人からだ。
缶ビール一本ずつ奢るだけで喜ばれるとは思うのだが、私はあまり酒を飲む席で制限みたいなものはしたくない。
「好きなだけ飲んでいいし、腹一杯食べようよ」
これがスタンス。
ただ、ふと立ち止まる。
「私って誰?」
なぜ社長でもないのに皆に大盤振る舞いしなければならないのか。
寂しいのか?
そういうわけではない。
一体何がしたいんだか。
これっていわゆる特技なのだろうか。
だとしたら何に活かせるのだろうか。
聞いた話によると、金があるフリこく女はいい女だそうだ。
海産物販売をやっていて思うことがある。
快く自分の懐から金を出せない人は、ある意味不幸だと。
金があるないではないような気がしている。
その人の度量だと思う。
金を使うことで優越に浸るのではない。
立場が上になることに快感を得るわけでもない。
全てはお互いにWINWINの関係になれることを知っているからではないだろうか。
もっと言うならば、互いが笑顔になるためである。
それには奢られる側も気持ちよく奢られる必要がある。
そのためには、どちら側も経験し、どちら側の気持ちも理解することが重要だ。
ここまで書いてあることに気づいてしまった。
もしかしてこれっていわゆる例の『長女気質』なのか?
単なる姐御肌なのだろうか?
次男坊と末っ子の集まりであるウチの会社の人達は、さぞかし私みたいなヤツがいることが頼もしいだろうに。
元ホストがこう言っていた。
「本当にどいつもこいつも馬鹿ばっかり」
だから私はこう言った。
「あぁ、私も馬鹿なんだ」
すると隣の会社の社長さんがこう言ってくれた。
「橋岡さんは違うよ、橋岡さんは馬鹿じゃない」
それが最強に嬉しかった。
きっとこの人とは同じ人種で住む国が一緒なんだ!
かといって惚れたわけではないのだが。