恐ろしい暑さの一日だった。
秋だから秋服を着て行った。
それなのに東京は三十三℃。
もうね、汗だくだわ。
目眩がしそうだった。
疲労感も一気に増し、休み明けとは到底思えなかった。
四連勤の初日にしては疲れすぎた。
夜になっても涼しくならなかった。
あまりにも暑いので、クタクタにもかかわらず北千住のプロントへ寄った。
すがるように生ビールを頼んだが、なんと温いこと。
仕方がないからレモンサワーを追加した。
これぞ、八月に味わった、地獄の夏バテに近い。
半分目を瞑りながら、フラフラした足取りで帰宅。
すがりつくように、QPコーワゴールド錠剤を飲んだ。
このクソ暑い中、元ホストと昼休みに中華料理屋へ行った。
「蓮ちゃん奢って?俺、今、千円しかないから」
私は気前が良いので、迷わずオッケーを出した。
「明日は給料日だから俺が奢ってあげるからね!」
はて、千円しかないのなら、夜ご飯はどうするのだろうかと考えたが、そこまで心配してあげたらヒモになりそうなのでそそくさと会社を出た。
どうしてそんなに金がないのかと訊いたら、パチンコを止められないのだそうだ。
「女がいたり結婚したりしていたら、パチンコなんてやめるよ」
「まぁ、確かに私も誰かが家で待っていたら真っ直ぐ帰るね」
「そうだろ?」
なんだよ、なんだよ、私に女になれとでも言っているのか?
このままじゃせっかく引越した清瀬についてきそうだな。
それはそれでどうなんだろう。
こうして一人パソコンに向かっている隣に元ホストがいると考えたら、面倒だよな。
それは元ホストに限らず、誰でも一緒のような気がする。
私と同じように、仕事から帰ったらパソコンに向かうような人ならいいのかも知れない。
ただ、家で何もやることがない人はテレビや映画でも観たいだろう。
人と暮すとはそういうこと。
ただ、私が谷塚を離れ清瀬の二LDKなんかに住み始めたら、一緒に住みたがる人が出てきそうな気もする。
もしくは、楽園を手に入れた四十代の女は、その楽園に満足し、男を必要としなくなるか。
いやいや、それは、嫌や~。
まだまだ諦めてはいない。
ただ、私は良くも悪くも、皆の蓮さんである。
皆が私を好きなのではなく、皆に平等な私が慕われているということだ。
人から注目されるとはそういうことだ。
私と云う人は、注目されているという意識は持っている。
だから通勤でもトンチンカンな格好はしない。
かといってOL風でもない。
年甲斐もなく、トレンドを取り入れたり、自分に似合ったものを着る。
皆より年上の自覚もある。
もっと言うならば、皆にとってこうでなきゃと思うのだ。
「あぁいう大人になりたい」
さらに頼られる太陽でなければならないと思う。
とはいえ、とことん自然体でいることである。
注目されるってそういうことだ。
ただ、私対大勢、ではなく、個人対個人の付き合いである。
それは単体として光り輝く上での鉄則だ。
かといって、大抵の人はそのような心構えでは生きていない。
注目されたいと思っていたとしても、そう簡単には実現しない。
太陽は一人ぼっち、だから多くの存在を救うことができる。
一度くらい太陽になりたいと思うか、真っ平御免だと思うか、それは人それぞれ。
たまに私は照らし照らされているのを実感する。
一人で生きる私も輝いているが、誰かと共に生きたらさらに輝けるようで在りたい。
それは清瀬の新居に居候させるとかそういうことではない。
もしくは、私が清瀬のアパートに引越しする前に、
「俺んとこ来ないか?」
そう言ってくれる人が現れてもいいような気もするが。