携帯電話を紛失していたのだが、パチンコ屋が預かってくれていた。
私って優しすぎる!
全く興味のないスロットに、付き合ってやっているのだ。
私の懐の深さ、理解力、包容力がわからんのか?
そう訊いてみたが、まだわからんと言われてしまった。
そりゃそうだ。
携帯電話を紛失した日は、元ホストだけが心配して電話してくれた。
案外、誰からもLINEもメールも電話も来ないことに私は少々ヘソを曲げ、何のためにほぼ毎日更新しているのだろうかと思った。
ただ、アクションを起こさないだけで、心配してくれている人もいるかも知れないと思いながらこれを書いている。
携帯電話を発見したことで運を取り戻した私は、キャッシングのことをすっかり忘れていた。
借りた金に運はついて来ないと思うが、奇跡的に携帯電話が戻ってきたことは、やはり神はまだまだ私を見捨てていないということだ。
ただ一つ悲しいことがある。
一日のデートをめちゃくちゃ楽しみにしていたのに、元ホストは仕事になってしまった。
二日の日は約束通り不動産屋の契約に行けるとのことだが、ウチには泊まりに来れなくなった。
赤羽に引っ越すまで我慢しなくてはならない。
その代わり、引越しを手伝ってもらうことにした。
私がなかなか数字を上げられないことを元ホストは嘆いている。
男女の関係を仕事に持ち込むな!と言われた。
は?
私達って男女の関係なの?!
手も繋いでいないのに?!
そのことが少し嬉しくて、何もかも許せそうな気がした。
恐らく元ホストが言う『段階』っていうのはなかなか進まないんだろうな。
手も繋いでないのに男女の関係とか抜かしているあたり、中学生より酷い。
そう簡単には進展しなさそうだけど、今度、私が信頼の神であることは伝えなければ。
そうそう、今月ズタボロの成績である私。
元ホストは社長からかなり責められているようだ。
なんで橋岡は数字上げられないんだ?と。
それなのに社長は私にはすこぶる笑顔だ。
一体全体どういうことだ?
こんなに成績の悪い女なのに、会社からは歓迎されている。
私の本当の良さなんて知るわけもなかろうに。
ただ、今の時点ではまだ期待されているようだ。
私は元ホストにこう言った。
「自信のなさが数字に表れているのかも」
すると、イラっとしたようで、こう言われた。
「蓮ちゃんさ、自信のない男に着いて行きたいと思う?」
いやいや、私は自信のない男に自信を持たせるのも好きなのだが。
「いいや、思わないね」
「だろ?自信っていうのは実績が七割、勘違いが三割」
ちょっと待てと。
私は自信なさそうに見せかけて、自己信頼が絶対的にある。
世の中私みたいなやつばかりだったら、こんなに平和なことはないと本気で思っている。
そう、時に私は圧倒的な不器用だと言われる。
しかし、その不器用さが人から信頼を得るのだとも思っている。
私が器用に立ち振る舞っていたらキモくない?
こんなに不器用なヤツもいるんだって、世の中の人は私を見て安心するのである。
そして、自分も不器用でいいのだと思うのである。
私は先輩からは馬鹿だと言われている旨を元ホストに伝えた。
「アイツは真面目、蓮ちゃんは不真面目だからさ」
私が真面目だったら、元ホストとは上手く行かないよ。
「アイツは一+一=二、しか知らない男。蓮ちゃんは四から二を引いて『二』にするタイプ、つまり視野が狭いのさ」
う~む、なるほどなとは思ったが、褒められているのか微妙だな。
もしかしたら、私は元ホストに認めてもらいたいだけなのかも知れない。
だったら、認めてくれる人の元へ行けばいいのに。
これって私がチャレンジャーな証拠なのだろうか。
ふと思った。
元ホストに認められることは一体何を意味するのだろうか。