ん〜、ノルマに対して一歩及ばずの成績。
ただ、苦しい中戦った感覚はある。
社長に呼ばれ、社長と二人きりで『教育』についての話をした。
私は基本的に同僚にも部下にも優しい。
若い頃は上司には反発していたが、それも無くなった。
できない人目線で教えるので、部下は私に心を開きやすい。
社長は、元ホストの教え方に危機感を抱いているようだ。
私が潰れることではない。
会社が潰れることだ。
社長は危機感を抱いているから、相当気をつけているようだ。
元ホストは悪気はないが、あのやり方では、私でも辛いんだから。
「敬意があればあんな言い方にはならない」
私は元ホストを愛しているからこそ、社長にそう言った。
「その通りだ」
敬意がないから馬鹿にした口調が出てしまうのだ。
社長にとって、元ホストは何考えているのかわからないそうだ。
だから尚のこと、私を頼るのだろう。
「俺のことどう思っているのか未だにわからんな」
元ホストは社長のことを微塵も信用できないといつも言っている。
社長も馬鹿じゃないから、それくらい見抜くのだろう。
ふと、思い出したことがある。
私が海産物販売を始める前に、元ホストが私を呼び出したことがある。
「俺と一緒に海産物販売やろうよ!俺から社長に言ってあるから」
その日、隣の会社の社長が私をひやかして、こんなことを言った。
「あ〜ぁ、蓮さんデートに誘われるんじゃない?」
つまり、とっくのとうに元ホストって私のこと好きだったんだよな。
どうしても自分のテリトリーに置いておきたかったんだと思う。
その日のことを考えるとニタニタしてしまう。
不器用だよなぁ〜。
私が入社してから海産物販売やるまで四ヶ月間、色々悩んだんだろうなぁ。
そして仲良くなっても色々悩んでいるんだろう。
そんな元ホストが愛おしく、やはり、ずっと傍にいたいと思うのである。