ノルマは達成できなかったが、再販二件獲得した。
元ホストは休みだったが、バイト先で困ったことがあったと連絡が来た。
あ、私を頼ってくれるんだ!
めっちゃ助かったと言ってくれた。
頼られると信頼されているのがわかる。
困った時、まず連絡するのが私であること。
こういうことがあると、私も頼っていいんだと思える。
無論、私には頼れる人はもはや元ホストしかいない。
もしかしたら、元ホストも私しかいないのかも知れない。
隣の会社の社長じゃなくて、私なんだと思った。
仲良くなりたての頃は、私ではなかったはず。
そんなことはどうでもいいが、頼られる喜び半端ない。
歩んできた道のりは決して間違いじゃなかった。
再販二件獲得した喜び以上に嬉しかった。
再販獲得の難しさはここでは語り尽くせない。
やっている本人にしかわからない。
一緒に働いている仲間でさえ、わからない。
わかるのは元ホストと先輩だけ。
だからノルマは達成できなかったが褒められた。
この調子で再販獲得を狙って行く。
これが私の仕事だからだ。
もう一つ仕事とされているのは、皆とのコミュニケーション。
私は自虐ネタで皆を笑わせたりしているが、ナメられないように気をつけてはいる。
たった一人女性従業員なわけで、下に見られていることはわかっている。
しかし、元ホストがいる時は、皆が私を馬鹿にしない。
元ホストがそれを許さないのを知っているからだ。
月末には、新人が入ってくるらしい。
私も教育の立場に回らなきゃならない。
不安はあるがやるしかない。
社長は元ホストに気を遣いまくっている。
辞められるのが怖いのだろう。
遅いとしか言いようがない。
こっちは着々と準備しているんだってば。
もう元ホストを止めることは誰にもできない。
先輩も気づいているだろう。
元ホストが変わったことに。
なんせ、パチンコ辞めたんだから。
毎日スロット打ちに行くか、飲みに行っていた元ホストが、毎日直帰している。
まぁ、その陰に私がいることにも、もしかしたら気づいているかも知れない。
私は非常にわかりやすい人間だが、元ホストはわかりにくい人間だ。
しかし、近しい人からしたら、変わりように唖然としていることだろう。
何かが変わったと見抜く人はいるはずだ。
かといって、私にそれを訊いてくる人はいない。
社長はとっくに気づいているかも知れんが、私には遠回しなことしか言えない。
何故なら、確かな証拠がないからだ。
元ホストはバレないように必死。
かといって、バレバレなところが元ホストの可愛いところ。
結局は正直者なのだ。
私もそうだが、付き合ったら隠しきれないかも知れない。
だったら、やはり、会社辞めて独立してからの方ががいいよな。
ニタニタしなくても、顔が赤くなってしまうかもだから。
それにしても、バイト先で困ったことがあって私を頼るなんてね。
どう考えても、普通は隣の会社の社長じゃね?
もしかしたら、隣の会社の社長のことさえ信頼できなくなったのかな。
だとしたら喜んでもいられない。
こうして私の心配は尽きないのである。